社会時評エッセイ

日本は
観光大国を
目指せ

藤 誠志

冗談だと思われていた
オバマ大統領の広島訪問

 四月十二日付けの日本経済新聞の一面は「原爆『非人間的な苦難』」という見出し。「主要7カ国(G7)による外相会合は11日、核軍縮・不拡散を訴える『広島宣言』などを採択し、閉幕した。原爆投下で広島と長崎は『甚大な壊滅と非人間的な苦難という結末』を経験したと指摘。世界規模での核兵器削減の努力を訴えた。幅広い課題を示した共同声明では、テロ対策に協調して取り組む具体策を5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でまとめる方針を盛り込んだ」「米政府はオバマ米大統領が5月の主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)の後に被爆地、広島を訪れる準備を始めた。大統領警護隊を中心にした『先遣隊』が4月中にも広島に入り、経路や訪問先を調べる。ケリー米国務長官の広島訪問の米国内外の反応を見極めたうえで、是非を最終的に判断する。『核兵器なき世界』をめざすオバマ氏が2009年に就任して以来、意欲を示してきた被爆地訪問が実現に向けて具体的に動き出す」とある。
 二〇〇九年一月二十日に第四十四代アメリカ合衆国大統領に就任したオバマ氏は、四月にチェコのプラハで「核兵器なき世界」を目指す演説を行い、核セキュリティ・サミットを提唱。この演説で、その年のノーベル平和賞を受賞した。翌二〇一〇年四月にワシントンで第一回の、二年後の二〇一二年三月に韓国・ソウルで第二回の核セキュリティ・サミットを行い、二〇一二年の選挙に勝って、二〇一三年一月にオバマ大統領は任期の二期目を迎えたが、その他の核廃絶への働きは見られない。核廃絶を訴えてノーベル平和賞を受賞した大統領として、彼のできることは現職大統領として初めて広島を訪問することしかないと、私は一連の流れから確信し、二〇一三年十月に広島駅前の大型開発の案件が持ち込まれた時、すぐに購入することを決めた。これまでのデータでも、日本の地方都市の中では、特に広島を訪れる訪日外国人の中でアメリカからの観光客が最も多い。オバマ大統領が広島を訪問すれば、一気にアメリカや欧米からの観光客が増えるはずであると考えたのだ。この土地に十四階建、七百二十七室のアパホテル〈広島駅前大橋〉を建設することを決め、二〇一五年二月十八日に起工式を行った。この時の記者会見での、「広島にこんな中・四国最大のホテルを建設しても需要がないのでは」という記者からの質問に対して、私は「核廃絶を訴えてノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領は、来年広島に来ます。そうすると欧米からの訪日外国人客が激増するよ」と答えたところ、オバマ大統領が来るなどということは冗談と思われたのか、会場に笑いが起こった。しかし今、オバマの広島訪問が現実になろうとしている。

訪日客目標数の上方修正は
日本の魅力からすれば当然

 私はこれまで世界八十一カ国を訪問し、各国の要人とディベートを行い、彼らが口々に日本の素晴らしさを語るのを聞いてきた。しかし日本国内では、教育の場でもマスメディアでも、南京大虐殺と称して、一枚の証拠写真も無いのに三十万人もの非武装の市民・女性や子供等の民間人を殺したとか、日本軍に拉致強制連行されたと抗議する家族などの当時の新聞記事が一つもないのに、朝鮮半島で二十万人もの若い女性を強制連行して性奴隷にしたとか、捏造された日本軍の過去の残虐で非道な蛮行を批難する主張がなされてきた。この遠因はアメリカの原爆投下にある。
 先の大戦末期、日本はソ連やスイス・スウェーデン・バチカンなど、様々なチャンネルを仲介に、国体護持のみを条件に終戦工作を行っていたが、アメリカはそれを知りながら、ポツダム宣言から敢えて日本の国体護持を認める条項を削除し、日本が容易に降伏しないようにした。こうして時間を稼いだのは、完成間近な原爆を完成させて日本に投下しなければならなかったからだ。
 対ナチス・ドイツ戦にソ連が勝利するために、アメリカは膨大な軍事援助を行い、軍事工場も建設。その結果、ソ連を世界最大の陸軍力を持つ軍事モンスターに成長させてしまった。このまま日本と終戦を迎えると、東ヨーロッパだけではなく、ヨーロッパと陸続きの全てのアジアやアフリカ等のエリアがソ連によって赤化(共産化)される危惧を覚えたアメリカは、原爆投下によってソ連を牽制するオフセット戦略をとる必要があった。一九四五年二月十九日から三月二十六日にかけて、既に制海権も制空権も失っていた日本軍が全島を要塞化して立て籠もる硫黄島に、迂回しても良かったのに、敢えて無理やり海兵隊を上陸させた。そして太平洋戦争全体での米軍戦死傷者二十八万人の十分の一、海兵隊全体の戦死傷者八六、九四〇名の三分の一にもなる二八、六八六名もの日本軍を上回る戦死傷者を出した。これを基に、日本本土決戦が行われれば百万人位の米兵戦死傷者が出るだろうと推測。これを防ぐには、軍部が「日本を降伏させる為に原爆投下の必要はない」と言っている中でも、原爆投下が必要だったのだと、アメリカ国民に納得させることが必要であった。そして硫黄島の激戦の最中の三月十日には、原爆だけが非道な兵器ではないと示すため東京大空襲で焼夷弾を投下し、一夜で十万人もの東京市民を焼き殺した。
 結局アメリカが原爆投下への非難対策の地ならしをして原爆の投下をしたのは、日本との戦争に勝利するためではなく、その後に予想されるソ連による世界赤化のための戦争で生じるであろう、戦死傷者が一千万人にも達する可能性が高い第三次世界大戦となる熱戦を抑え込むためだったと言える。非人道的な原爆を投下しても、アメリカが正義の国であり続けるためには、投下された日本が悪い国でなければならない。だからアメリカは、虚構の南京大虐殺や慰安婦の強制連行を否定せず、プレスコード(新聞編集綱領)により、メディア報道を縛り、要職に就いていた二十万人もの人達を公職追放し、不都合な七、七六九種類の書籍を全て集めて焚書し、東京裁判史観を押し付け、日本人を洗脳してアメリカが押し付ける歴史観を常識とさせてきた。原爆投下から七十年以上が経過し、かつては八割を越えていた「原爆投下やむなし」というアメリカ人が、今は六割程度にまで減少してきている。アメリカの世論も変化してきているのだ。

トランプ大統領の誕生は
日本独立の大きなチャンス

 多くの人々の期待の中、二〇〇九年に就任したオバマ大統領だが、「米国は世界の警察官ではない」と宣言したことで、世界中を混乱に導いた。ウクライナに介入したロシアはクリミア半島を併合、イラクやシリアではISが跋扈している。中国は南シナ海の岩礁を埋め立て、軍用滑走路を造り、艦船を派遣、軍事基地化し、公海における航行や上空飛行の自由等を阻害し、弱いオバマ大統領の任期中に覇権の既成事実を作り上げようと急いでいるのである。今回このことがG7で取り上げられた。
 弱い大統領の次は強い大統領が就任するというのは、著名な戦略研究家のエドワード・ルトワック氏の言葉だが、その流れに乗っているのが共和党のトランプ氏だ。彼は片務的な日米安保を変更し、日本も韓国も自力で核武装せよと主張しているようだが、そもそも片務的な日米安保は、日本の軍事大国化を防ぐ軛として日本国憲法とセットでアメリカが定めたものだということをトランプ氏は十分に理解していない。しかし、もしトランプ氏が大統領になるのであれば、ある意味で日本が真の独立国家となる絶好のチャンスだ。憲法を改正し、アメリカがNATO四カ国(ベルギー・ドイツ・イタリア・オランダ)と締結しているニュークリア・シェアリング(核兵器の共有)を日本にも導入して、中国の膨張を食い止め、東アジアにおける力のバランスを取り戻し、平和と繁栄を築く。その布石として五月の伊勢志摩サミットは重要なステップとなるだろう。
 オバマ大統領の広島訪問を、今から三年前に私は読み解いた。事業成功のために必要なのは、的確な未来予測だ。もう一つ、私が最近予測を的中させたのは、訪日外国人旅行者の目標数だ。世界八十一カ国を見た私からすれば、日本ほど素晴らしい国は存在しない。治安がよく、夜でも女性が一人歩きできる。食が安全で美味しく、「和食」というハイレベルな文化もある。約束は守られ、人々は親切で、もてなしの精神に溢れている。公共交通機関は常に時間通りに動く。アパグループは二〇一〇年四月一日から、東京都心でトップを取るべく第一次頂上戦略「サミット5」という中期五カ年計画を実施したが、その直前の二〇〇九年の訪日外国人旅行者数は六百七十九万人だった。私はまだまだ増えると考えていた。途中、東日本大震災があり、停滞することもあったが、二〇一二年に安倍政権が誕生し、円安株高政策を断行したところ、二〇一三年には一千万人を突破した。この時に私は、この素晴らしい国・日本に四千万人も五千万人も海外から旅行者が来ても、おかしくないと公言した。正に今年三月、日本政府はそれまでの目標を倍増し、訪日外国人旅行者数を二〇二〇年までに四千万人、二〇三〇年までに六千万人にすると発表し、日本は観光大国を目指そうとしている。これも私の予言通りとなっている。

東京から地方へ移行
訪日客の行き先は多彩に

 初めて日本を訪れる外国人旅行者は、まず東京に来る。そして二度目や三度目には地方に目が向き、京都や北海道、北陸を訪れる人が多い。東京制覇を目指した第一次頂上戦略「サミット5」では、中央・港・千代田の三区を中心に、都心に設計中・建築中を含め、一万三千八百一室のホテルを建設した。二〇一五年からの第二期頂上戦略「サミット5‐Ⅱ」のテーマは「一点突破の第一次頂上戦略に次ぐ全面展開」であり、最初の第一次頂上戦略は、東京都心に集中した展開を行い、北は池袋、西は新宿・渋谷、南は品川、東は浅草を取り込む四角の中の、駅から歩いて三分以内の場所にホテルを建てたことが功を奏し、完成した東京のホテルの全てが月間稼働率は一〇〇%以上となった。海外からの旅行者の増加もあるが、景気回復に伴う東京へのビジネス客の増加も高稼働率に貢献している。訪日外国人旅行者数増加を目指す日本で、今、急速に問題化しているのは、ホテル不足だ。しかしこれを解消するための施策の実行が決定的に遅れている。
 かつて都心の住宅不足を解消するために、オフィスやホテルの建設に住宅附置義務が設けられた区があったが、それらの地域では、今でもホテルなど一定の条件以上のビルを建設する時には住宅も作らなければならない。マンションでは廊下やロビーなどの共用部分は容積率計算には入らないが、ホテルでは入ってしまう。これらのルールを撤廃するだけで、ホテルが建てやすくなったり、建てるホテルの部屋数を増やすことができる。またホテルがいかがわしいものと見做されているのか、文教地区でのホテル建設が条例で禁止されているのも、積極的な外国人との交流が求められる国際化の時代にはそぐわないルールだろう。
 宿泊施設不足の解消の切り札として「民泊」を使うのもどうか。元々宿泊施設としては造られていないマンションや住居に旅行者がやって来ることで、他の住民との問題が発生することは必至だ。一部屋に過剰に多くの人々が次々と泊まるという事態も起こるだろう。スマートフォンのアプリによる仲介サービスの普及もあって、欧米でも日本でも民泊は増加するとは思われるが、ホテル不足はやはり真っ当な宿泊施設の増加によって補うべきであり、そのためには容積率を増やすだけでなく、一定規模以上のホテルを建てるときに、千代田区・港区等において課せられている住宅附置義務を撤廃したり、都心においては斜線規制や日陰等の規制も緩和すべきであると思う。このことを私が主催している勝兵塾に参加する国会議員に提言したところ、多くの国会議員はこの問題を充分に認識していなかった。だが、四月に国土交通省がホテル容積率を緩和するという報道もされていて、私の提言もいくらかは実現される見込みが出てきた。
 今後は中国だけではなく、インド、インドネシア、ベトナム、タイなど、日本周辺の人口の多い国々の所得が増加してきて、海外旅行離陸期を迎え、最も近い先進国で数多くの魅力を持つ日本にやってくる観光客が更に増加してくることが見込まれる。またLCC(格安航空会社)の発達で、日本の地方空港にアジア各都市からダイレクトに飛ぶ航空便が増加するだろう。東京の次は地方だ。第二期となる「サミット5‐Ⅱ」の次のステップは、地方展開だ。東日本大震災復興への私の出来る支援策はホテルを建設することだと考え、福島駅前に福島市内最大のホテルを建設することとした。また大阪御堂筋に大阪でアパホテル最大の九百室超の三十二階建てのタワーホテルなどを建設、その他名古屋や京都などでも多くの開発計画が進行している。これらは、今、日本全国でホテルを増やすことこそが、何よりも国策に資することだと考えているからだ。

世界中のホテルの多くはいずれ
「新都市型ホテル」に収斂される

 二〇〇八年のリーマン・ショックの後、全ての金融機関が新規融資の停止はもちろん、既存の融資も引き上げる状況となり、新興ディベロッパーはマンション用地として取得した土地を、融資返済のために泣く泣く購入金額よりも安く売却していた。そのような土地をアパグループは全てキャッシュで購入し、新しく建設したホテルが今、高稼働率を保っている。アパグループ今期十一月連結決算予測は、売上は一、〇六九億円、経常利益が三百三十億円の見込みで、前年の売上九百十一億円、経常利益二百八十一億円と比べて増収増益が見込まれる。経常利益率が三〇%を超えるホテルグループは、おそらく世界でもないと思う。このビジネスモデルが世界から注目を集めていて、世界各国から数多くの引き合いがやって来ている。アメリカ・ニュージャージー州で最も有力な不動産オーナーに請われて、初の海外進出として昨年十一月にプレオープンしたアメリカ・ニュージャージー州のアパホテル〈ウッドブリッジ〉が、いよいよ六月二十日に、全室ウォシュレット付きで、日本食レストランも併設して、グランドオープンを迎える。
 インターネットの発達により、あらゆるサービスで一強全弱時代が到来している。ネットで比較すれば、どこが一番安いかはすぐにわかってしまい、そのカテゴリーで、最も安くて良いサービスが他を淘汰してしまうからだ。ホテルの中にも都市ホテル、ビジネスホテル、リゾートホテルなどのカテゴリーがあるが、アパホテルはそのどれでもない、高機能・高品質・環境対応型の「新都市型ホテル」という新しいカテゴリーを生み出し、価格競争から逃れて、この新分野で日本全国を制覇、そして世界進出を開始している。
 これまでの都市ホテルの「ご主人様に仕える召使」のようなサービスとは異なり、新都市型ホテルでは、「誇りを持って泊まるお客様を誇りを持ってお迎えする」「ゲストとスタッフは対等である」という理念の下、「必要なサービスはしっかりするが、必要ではないサービスをしないこともサービスである」がサービスの基本だ。ホテル事業を始める時、どうすれば稼働率が上がるかを熟慮した。一週間七日の内、五日あるのは平日だ。平日に強いホテルの方が稼働率は上がる。ならばターゲットはビジネスマンと結論付け、そのターゲットに絞ったビジネスモデル構築を当初から行ってきた。キャッシュバックがある会員システムも、私自身が第一号会員となって、最初のホテルから導入した。ビジネスマンの使い勝手を考えて、どこでも駅から至近距離(出来るだけ徒歩三分以内)に建設。商談をして飲んで食べて、部屋に戻ってからは風呂に入ってテレビを見て寝る…というビジネスマンの行動から、部屋ではベッド中心で過ごすと考え、ベッドから見やすい位置に五〇インチの大型テレビを設置、枕元に照明や空調のスイッチを集中し、ベッドはシングルルームでも幅一、四二〇ミリの大型のもので、自社開発の「クラウドフィット」という高級ベッドを導入している。よく「アパホテルの部屋は狭い」と言われるが、「環境を考えて狭く造ってあるのです」と答えている。
 今の世の中はコンパクト化が主流で、フルサイズのキャデラックがハイブリッドのプリウスに、エンジンが四つのジャンボジェットが二つの七八七に変わって来ている。ホテルの部屋だけ、いつまでも大きければいいというものではない。「アパホテルはスペースを売るのではなく、満足を売るホテルだ」と考え、進化させてきた。
 環境対応としては、空気を混ぜることで水圧を保ちながら水を節約する節水シャワーや、たっぷり感がありながら従来の八割の湯で済む卵型浴槽、その他一定の水量で自動的に止まるサーモスタッド付き定量止水栓や遮熱カーテンなども装備。結果、通常の都市ホテルの三分の一の炭酸ガス排出量に抑えている。部屋が小さいために、同じ延べ面積でも多くの部屋を作ることが可能で、イニシャルコストもランニングコストも低く、それが世界最高収益率のビジネスモデルを支えている。いずれ世界の多くのホテルは、この新都市型ホテルに収斂されていくだろうと、私は昨年十一月に、アメリカ進出に際してマンハッタンで行った記者発表で述べた。このアパホテルの成功を生み出したのは、分からないことを「現代用語の基礎知識」で調べながら、小学生の頃から新聞を読んで蓄えた、私の先読みの力だ。事業で成功するためには、未来予測が必要不可欠。その予測で一九九〇年代のバブル崩壊、二〇〇〇年代のファンドバブルやリーマン・ショックといった近年の経済大変動を、全て飛躍のチャンスに変えてきた。その結果、創業四十五年間一度の赤字もなく、一人のリストラをすることもなく、一千数百億円の納税義務を果たし、最新決算でも好業績を達成することができている。こうして事業で需要と雇用を創出し、それをベースにこのApple Townや勝兵塾などの言論活動を行ってきたことが私の誇りだ。

2016年4月21日(木)11時00分校了