社会時評エッセイ

真正保守勢力の躍進を強く望む

藤 誠志

菅内閣は反小沢派の登用だけで参院戦に勝利するつもりだ

 小民主党政権の欺瞞が明らかになってきた。政権公約としてマニフェストに掲げられたのは、できもしないバラマキ政策ばかりだった。子ども手当の月額二万六千円は無理だと長妻厚生労働大臣が発言、高速道路は無料化どころか値上げ、一兆円規模の財源が必要な農家の戸別補償制度にも暗雲がたれこめ、普天間基地移転問題に至っては「最低でも県外」どころか、自民党政権時代の合意のままで決着した。財源の目処や交渉の切り札のないままに夢ばかり語って昨年の衆議院選挙に大勝、政権交代は成し遂げたものの、当然のようにここに来てそのツケが回ってきた。それ故の鳩山政権の崩壊だ。しかし、ここで取った議席はまだ三年以上保たれる。
 自民党政権時代に日米安全保障協議委員会で決めた辺野古のキャンプシュワブ沿岸への普天間基地の移設だが、これを無責任に「国外、最低でも県外」と選挙時に放言した鳩山首相は、自ら定めた五月末という期限に追い詰められ、みんなが納得する腹案があるなどとデタラメな発言を繰り返した挙句、支持率の二◯%割れという事態に陥り、私が本誌五月号で予言した通りに辞任を余儀なくされた。小沢氏を道連れにするというのも、細川政権の在任期間を超えたあたりでというのも私の予測通りだった。その辞任の翌々日には鳩山氏より酷い日本人拉致実行犯(辛光洙)釈放嘆願署に署名した菅直人氏が民主党の代表に選ばれ総理大臣となった。表紙を変えただけなのにメディアの報道は大変好意的である。
 昨年の衆議院選挙の時の民主党の武器は「バラマキ公約」だったが、今度の参議院選挙での武器は「反小沢」である。そのために適材適所な人事を行わず、反小沢とみなされる議員を閣僚や党の要職に登用して国民の人気を取り戻し、改選議席の過半数を獲得しようとしている。バラマキ公約にせよ、反小沢人事にせよ、すべてが選挙対策であって、でたらめな公約であっても一旦当選すれば衆院では長ければ四年間・参院では六年間議席が確保できる。常に実際に実現できる政策よりもそれぞれの分野から票の取れる政策を並べる選挙だけのためのマニフェスト。そもそも民主党は政策で一致する政党ではなく選挙当選互助会のようなものであり、統一された思想や政策は皆無なのに政策集には外国人地方参政権、夫婦別姓選択制、国立追悼施設の建設、国籍選択制度の見直し、人権侵害救済機関の創設など売国法案の数々を並べている。こんな政権が日本を運営していていいはずがない。民主党は任期満了で、九月に再度代表選挙を行うことになっており、その際に小沢前幹事長が菅総理に圧力をかけ、内閣改造で親小沢派の登用を迫り、院政を敷くことは必至だ。今はあたかも失脚したかのように振る舞う小沢氏だが、党内で百三十人を数える小沢グループは依然圧倒的最大派閥であり、その影響力はまだまだ大きく、参院選の候補の大半は小沢前幹事長が擁立した候補であり、選挙で民主党が勝とうが負けようが参院小沢派は肥大化し、菅内閣をコントロールする。

自民と民主の政策は目先の選挙の人気取り

 菅首相は参院選の選挙結果の責任を問われないように、現状の五十四議席を下回る五十議席が目標と発言している。本来なら単独過半数の六十議席と言うはずなのに、非常に低めだ。自民党の谷垣総裁も野党であれば当然民主党の過半数確保を阻む目標を掲げるべきなのに、改選議席百二十一議席に対して当初は四十議席台という弱気な目標を出し、党内からも反発の声が上がり、あわてて与党を過半数割れに追い込むと目標を引き上げさせられた。これを見る限り、谷垣氏からは政権奪回の意欲は感じられない。彼は総理大臣ではなく、野党第一党の党首で満足しているのではないだろうか。本来であればきちんとした国家戦略を掲げて国民の審判を仰ぐべきなのに、両党とも目先の人気取りだけを考えた政策で国民に選択を求めている。そろそろこんな流れは断ち切るべきだ。
 一方国民の動向も心配だ。まんまと戦略に乗って昨年の衆院選ではバラマキ民主党を勝利させ、今度は菅首相が反小沢で人事を固めると、二◯%を切っていた内閣支持率が六十%を越えた。今、菅首相が行っている手法はまさに小泉元首相がとったものと同じだ。小泉氏は、郵政民営化法案を巡って衆議院を解散、メディアは一斉に自民党が野党に転落すると報じたが、民営化に反対する党内勢力を「敵」として、「自民党をぶっ壊す」というスローガンを掲げることで、二◯◯五年の総選挙で圧倒的な勝利を収めたのだ。菅首相も小沢グループを「敵」とすることで、支持率アップを狙い、今のところそれは大成功しているようだ。しかし先にも述べたように、小沢氏が逮捕されない限り、民主党がその影響下から脱することは、まずあり得ない。またあれだけ圧倒的な国民の支持を受けた郵政民営化が、わずか九人の国会議員しか擁さない国民新党によって覆され、多くの国民が危惧する毎年莫大な人件費負担が増大し、規制緩和に逆行する新郵政法案が参院選後に可決すれば、民主党政権は民意に反することとなる。今こそ真正保守を標榜する政党が躍進し、与党を過半数割れに追い込まなければいけない。

このままだと韓国は北朝鮮に取り込まれる

 日本経済新聞の六月十二日の朝刊の一面には、「米軍事費一兆ドル削減」という見出しの記事が出ている。オバマ政権は、今後五年間で一兆ドル(約九十兆円)もの軍事費を削減するという。アメリカの世界に対する影響力は低下しており、代わりに中国の台頭が著しい。そんな東アジア情勢の中で起ったのが韓国哨戒艦撃沈事件だ。韓国もアメリカも北朝鮮のバックにいる中国を慮って、強い姿勢を打ち出せない。非常に情けないことだ。六月十二日の産経新聞朝刊には以下のような記事が出ていた。『韓国で先ごろ起きた哨戒艦撃沈事件は「なぜ北朝鮮が?」と、動機などに分かりにくいところがある。そこでこれに「誰が一番得をしたか?」論をあてはめてみると、面白い。結論は「一番得をしたのは北朝鮮」で「犯人はやはり北朝鮮」となって納得なのだ。そう思わせられたのは先週、行われた韓国の統一地方選挙が、まさに北朝鮮の思い通りの結果になったからだ。選挙結果は内外の予想を裏切り与党惨敗、野党大勝に終わった。ソウル市長も危うく野党に取られるところだった。哨戒艦事件で北朝鮮に対する批判が高まっていたときだから、安保重視の保守派の政権・与党に有利と思われたのに、結果は逆だったのだ。北朝鮮は当初から哨戒艦事件は「韓国のデッチ上げ」といい「選挙を与党を有利にするための謀略」などといった政治宣伝に熱を上げていた。ところが政権・与党が「北の脅威」を強調し、北朝鮮糾弾のトーンを高めたため、世論は「南北の緊張が高まるのはまずい」となり、逆に「戦争より平和」を訴えた野党支持に流れてしまったのだ。これには「このままでは戦争だ!」「われわれは戦争準備ができている!」などといった北朝鮮の脅迫キャンペーンも効いた。「戦争か平和か」といわれれば、緊張が緩んで久しい、豊かな暮らしの韓国社会は「平和」に傾く。北朝鮮に対しては「対立より支援・協力」を主張する野党の勝利は、北朝鮮の大いに望むところだ』という。本来ならきっちり報復すべきなのに、これが今の韓国だ。まさに韓国の敵は韓国人といった状況であり、このようなメンタリティになることで、次第に北朝鮮に取り込まれていくのだろう。韓国の隣の日本も他人事ではない。もっと強力で地域のパワーバランスを考慮でき、独立自衛の国家を目指す政党の躍進ができないと、日本の将来もますます危うくなってくるのではないだろうか。

「ネット世論」の台頭がこれからの日本の希望だ

 このような巧妙な謀略戦に人々が騙され、次第に洗脳されていってしまうのは、民主主義の弱さだ。一方、今回北朝鮮がとったような大胆な作戦を実行できるのが独裁政権の強みだろう。北朝鮮同様、独裁国家である中国も一瞬にして決定を下し、あらゆる状況に即座に対応できる強みを持つ。この強みを生かし、アメリカの影響力が低下しつつある東アジアにどんどん勢力を伸ばしてくるのは必至だろう。今はまだ冗談にしかならないが、いずれはアメリカと中国の勢力を分ける線が、日本とハワイの中間辺りに引かれ、日本は中国の一つの自治区となってしまう日も来るのではないか。政権政党である民主党の幹事長である小沢氏が、百四十三人の国会議員を含む六百人以上の人を連れて、まるで朝貢外交のように中国を訪問して、胡錦濤主席との二ショット撮影ではしゃぐ姿をみていると、中国による日本支配の恐れがますます大きくなっているように感じるのだ。
 「反小沢」と見せかけるだけで、一瞬にして内閣支持率が三倍にも上昇する有様を見ていると、国民が自身の確固たる意見を持たず、風の吹きようで選挙結果が決まってしまう今の日本の民主主義に非常な不安を感じる。そもそも民主主義は、これほどまでにメディアやインターネットが発達することは想定していなかった。直接民主主義として、実際に人々が議論をして物事を決めるのが本来の民主主義のあるべき姿なのだが、今やメディア世論がはびこり、人々の意見はメディアによってどのようにでも左右させられている。民主党政権はメディアが作ったようなものだ。民主党に不利な報道は小さく淡々と報じ、有利な報道は派手に繰り返す。わずかな事務所費の不備の問題を延々とメディアに追求され、安部政権の農林水産大臣だった松岡利勝氏は自殺にまで追い込まれた。今また菅内閣にも事務所費の不明確な閣僚が出てきているが、メディアの報道は少なく大きな話題にはなっていない。北海道教職員組合からの違法献金を受けていた民主党の小林千代美議員も、鳩山前首相から辞職を勧告されながらも小沢前幹事長の議員辞職に影響を与えるのではとなかなか辞めさせてもらえず、そのことをメディアはまったく追求してこなかった。このように日本のメディアは、非常に不公平な報道に終始している。
 今後の一つの希望は、メディア世論に対抗してネット世論が形成されて来ていることだ。今のメディアは六十歳前後の全共闘世代に牛耳られているが、ネット世論の主役は二十~三十代の若い人々だ。ネットではこれまでの教育や報道に囚われず、真実の歴史を探求する動きも盛んだ。戦後六十五年経過した今、そろそろ真実の歴史に目覚め、「誇れる国」日本の再興を目指すべきであり、その担い手は若い人々だろう。そんな彼らのために書いたのが、私の新刊『誰も言えない国家論』だ。この中で私はいろいろな歴史の真実を伝えようとした。例えば長年に亘って関東軍の仕業とされ、日本の大陸侵略のはじまりとされていた一九二八年の張作霖爆殺事件が、実は旧ソ連の特務機関による、日本軍の犯行に見せかけて起こした事件であったこと、アメリカによる広島・長崎への原爆の投下は、よくいわれるような戦争の早期終結や本土決戦による犠牲者を少なくするためではなく、アメリカが既に始まりかけていた冷戦でソ連を牽制し、ポスト第二次世界大戦の覇権を握るために敢行したことだ。
 アメリカは一九四三年五月の時点で既に、完成すれば日本に原爆を投下することを決定していて、完成までの時間稼ぎとして日本の降伏条件である天皇制の維持に対する回答を曖昧にし、戦略上の必要性も薄く、制海権も制空権も持たず背水の陣を敷いた日本軍の立てこもる硫黄島の戦い(一九四五年二月~三月)や沖縄戦(一九四五年三月~六月)で莫大な米兵の犠牲(硫黄島では二万九千人近い死傷者、沖縄戦では死傷者・不明者合わせると八万五千人)を積み上げ、本土決戦が行われれば米兵の戦死傷者は百万人を超えるだろうという状況を演出し、本土空襲で他都市では防空壕もあって一回の空襲で数人から数千人で、繰り返し空襲されたエリアでも、延べで一万人を超える死者を出したところは大阪府の一万五千人強と愛知県の一万三千人強だけであったのに、東京大空襲では原爆に匹敵するほどの莫大な死者を出させるために一九四五年三月十日の一日だけで三百三十四機ものB-29を繰り出し、合計三十万発の焼夷弾を周囲を取り囲むように投下し逃げ道を塞ぎ、それから炎に囲まれた内側に防空壕も有効でないほどの絨毯爆撃を加え、十万人もの人々を虐殺したのだ。こんな大量虐殺行為は通常兵器の焼夷弾でも十万人を超える犠牲者が出るのだと原爆投下を正当化し、広島では十万人以上、長崎でも七万五千人を超える人々を虐殺した。
 東京裁判で日本は悪い国だから原爆を投下して民主主義の良い国にしたというストーリーを作り出しマインドコントロールしたのがアメリカだ。「どんな国でも国益のためには人も殺し、戦争もする」のが世界の常識だ。このようなことを、私はこの『誰も言えない国家論』に書いた。

参院選後の政界再編がこの先の日本には必要

 一昨年から私が始めた「真の近現代史観」懸賞論文は、第一回の最優秀賞を現職の航空幕僚長田母神俊雄氏、第二回の最優秀賞を明治天皇の玄孫である竹田恒泰氏の論文に贈ることができた。最近の田母神氏の人気を見ていても、私が望む真実の歴史の広がりを感じることができるようになってきた。今こそ真正保守の党が立ち上がり、七月の参院選で一定の成果を出すことに期待したい。折しも安倍元首相らが真正保守勢力を結集することを表明した。六月十一日の読売新聞によると『超党派の保守系国会議員でつくる勉強会「創生日本」会長の安倍元首相、たちあがれ日本の平沼代表、日本創新党の山田宏党首は十日、都内で記者会見し、新グループ「日本を救うネットワーク」(救国ネット)を設立すると発表した。「反民主」の立場から連携し、参院選で民主党の単独過半数獲得を阻止するのが狙いだ。設立合意書では、民主党内に積極論がある永住外国人への地方選挙権付与や夫婦別姓制度導入などを、「国家を解体し、家族を崩壊させる政策」と批判し、「健全な保守政権をつくる」としている』という。このような勢力が民主党の単独政権を許さず、今の民主党や自民党のように国のための戦略や政策を疎かにして、政権や議席数に執心する政党に楔を打ち込むことに大いに期待したい。参院選の後の一刻も早い時期に政界再編をし、そこから生まれる新政権が長期ビジョンに立った国家戦略を提示し、日本を今の体たらくな国から、誇れる国へと再興してくれることを心から願っている。