社会時評エッセイ

政界再編で真正保守の安定政権を作れ

藤 誠志

権力継承時の主導権争いで金正日政権は崩壊寸前

 小誌七月号(六月五日発売)のエッセイで、私は『韓国哨戒艦沈没は北朝鮮のテロ行為だ』『韓国は報復として北に予告限定攻撃せよ』という見出しをたて、『韓国政府は北朝鮮による攻撃との見方を強めているが、談話で「北の関与」を明言するかどうかは慎重に判断すると、沈没時から北朝鮮の関与を疑いながらも、韓国の対応は妙に冷静だ』と書いた。その後事件の対応の舞台は国連に移されたのだが、七月十日の読売新聞に、『韓国海軍哨戒艦「天安」沈没事件をめぐって、国連安全保障理事会が九日、議長声明を採択した』『四十六人もの死者を出した事件で、北朝鮮の名指し非難や謝罪要求を盛り込めなかった結末は「韓国外交の非力さを露呈した」(南北問題専門家)といえる。韓国国内では、保守派から北朝鮮を追い込めなかったことへの反発』があるという。『李明博政権には、安保理の結論を南北交渉で優位に立つきっかけにしたいとの思惑があったが、今回の議長声明でこの狙いが達成されたとは言い難い』と報じている。この事件の背景にあるのは、北朝鮮の核保有だ。核を持つことで反撃される恐れがないと判断しての「撃沈行為」だろうが、それにしてもやり方が荒っぽ過ぎる。そのことからも、今や北朝鮮は崩壊・暴発寸前の状況にあるとみられる。北が崩壊・爆発時にストレートに巻き添えをくらうのは韓国である。そう考えると今回の韓国哨戒艦撃沈は「援助しないと暴発するゾ」との北朝鮮からの「脅し」と受け止めるべきである。今北朝鮮は、後継者を金正雲へとすんなりと継承するのか、それとも中国が推す金正男とするのかの、激しい主導権争いの真っ只中とみられる。読売新聞の記事には『「我々を少しでも中傷する文書が作り出された場合、軍と人民は国家の尊厳の重大な侵害と受け止め、国権守護のための決死の戦いを辞さない」(祖国平和統一委員会報道官)と警告してきた。北朝鮮は今後さらに言葉による威嚇を強める可能性が高い』と書かれているが、この強気の姿勢も権力争いの中の得点稼ぎではないだろうか。

みんなの党も公明党も民主党とは連立を組めない

 金正日政権の崩壊で一番困るのは中国だ。多少対応に不満はあるにせよ、政権維持のために人々を強制収容所に送りこむなど国民を弾圧している北の独裁政権は、中国社会の多くの矛盾を覆い隠す「盾」となっている。この国がロシアや韓国、アメリカの勢力下に入ることは中国にとっては、絶対に認められない、大きな脅威だ。だから今回の事件でも国連において、韓国が強く望んだ北を名指しで非難することに中国は反対し続け、結局北朝鮮は名指しされなかった。一方名指し非難すらできなかった李明博政権には、国内から非力外交という批判が噴出している。しかし同じ立場に日本が立たされた場合はどうだったか。韓国よりもみっともない解決策しかとれなかったのではないだろうか。
 北朝鮮という脅威を隣に持つ日本はこの七月、当面の国の行き先を決める参議院選挙を迎えた。この後三年間は国政選挙のない中で行われたこの選挙、もし民主党が過半数を獲得すれば、外国人地方参政権、夫婦別姓選択制、国立追悼施設の建設、国籍選択制度の見直し、人権侵害救済機関の創設など国家を危うくする法律が次々と成立し、ますます日本は衰退へと向かうと思われたが、ここはさすがに国民の良識が働いて、民主党は過半数どころか改選議席にも遠く及ばない四十四議席に終わった。この選挙に際しての各党の主張を見ていても、この国の有り様について主張する党はたちあがれ日本と日本創新党ぐらいのものだったが、両党ともに惨敗した。十議席を獲得し、大躍進したみんなの党だが、この党は天下り禁止、独立行政法人の廃止・民営化、公務員制度改革法案など官僚機構には厳しい姿勢をみせるものの、この国をどうするかという最も大事なことが、渡辺代表からは一向に伝わってこない。参院で過半数を失った民主党は当然新たな連立を模索することになる。民主党は選挙前に普天間問題に対する考え方の不一致を理由に、社民党を連立から切り捨てた。その代わりに今度は、かつての自民党が社会党の村山党首を総理に据えて政権与党に返り咲いたように、みんなの党の渡辺党首を総理に据えてでも連立を組み、与党が過半数を確保しようと計画していたが、民主党のあまりの負けっぷりでみんなの党と組んでも過半数に達せず断念した。選挙当選互助会ともいえる確固とした政策も持たず、漠然と「生活が第一」と唱える民主党と、官僚機構に厳しいみんなの党との連立となった場合、官僚支配を抑える政策は実行されただろうが、民主党の支持母体である連合と日教組の影響により彼らが期待する政策がまかり通り、公務員改革はまったく行われず、ばらまきの大きな政府を続け、日本は沈没していくことになっただろう。
 民主党は公明党との連立を模索するが、公明党は民公連立政権ができても内閣支持率はガタ落ちとなり、次の衆院選で民公連立政権は惨敗し政権を手放すことになると考え連立話に乗ってこれない。

法人所得税の減税で企業の国際競争力をアップ

 もし私が日本における絶対的な権力を手に入れたなら、何をするだろうか。私は「誇れる国、日本」の再興を目指し、真の近現代史観に基づく正しい歴史教育を行うとともに、現在の記憶力重視の偏差値教育から議論をして真実を探し出すディベート教育に力を入れる。そして第一に現行憲法を破棄し、自主憲法を制定して独立自衛の国家を目指すだろう。アメリカとの安全保障条約を対等互恵なものに変え、当然の如く集団的自衛権も認める。戦後のGHQの政策は「強い国、日本」の解体であって、それは即ち戦前の歴史の書き換えと家族の分断である。私は愛国心、郷土愛は家族愛から始まると思う。戦後解体された大家族制度を復活させ、全ての遺産を長男が相続し親の老後の扶養義務を負う家督相続制度を復活させる。政権は効率のいい小さな政府を目標とする党が担い、国家公務員も地方公務員も天下りを禁止して定年を六十五歳にまで延長し、民間でできる部門は民営化し、人員を半減、国会議員も地方議員も議員数を半減。歳費も半減させて、議員にかかる経費を現在の四分の一まで圧縮する。また企業の国際競争力を高め、景気復興に力を入れ、そのためにも税の直間比率を見直し、消費税を国際基準(およそ十五%)に近づける増税を行い、増えた税収を子ども手当や農家戸別補償のようなバラマキに使うのではなく、法人税率を最高三◯%に引き下げるなど、法人税減税の財源として活用するほか、個人の所得税率も年収三百万円までは無税、三百万円を超える部分は一◯%、一千万円を超える部分は二◯%、三千万円を超える部分は三◯%とし複雑でわかりにくい租税特別措置法を見直し、わかりやすくする。また、親が一旦税を払って貯えたお金を家族などに分け与えるだけで払わせられる相続税や贈与税を取りやめる。住宅の場合、土地は資産として消費税はかからないが、建物は資産であり消費財でもあるとして、不動産取得税も固定資産税もかかっているのに消費税もかかるが、住宅の消費税は廃止する。法人には認められている建物の償却を個人の住宅にも認めるようにする。
 日本のインフラ投資はまだまだ不十分で、物流コストが諸外国に比べて割高だ。物流コスト低減のために、すでに一部では行われているが、超低金利の今、百年国債を発行して資金を調達し、森内閣時に成立した大深度地下の公共的使用に関する特別措置法を活用したインフラ整備をもっと加速すべきだ。例えば山手線や首都高速道路はすべて地下へと移動させ、開かずの踏切をなくし、地上の空いた土地は、せせらぎの流れる緑地帯とする。また山手線の内側に数箇所の開発促進地区を設けてここでの建築物は建ぺい率を五◯%、幅員十メートル以上の道路に面した五〇〇㎡を超える宅地の容積率を一◯◯◯%とし、その容積の二〇%以上は、住宅とする付置義務を設け、十階建て以下の建物を禁止する。東京をこんな緑の溢れる超高層の街にデザインし直せば、世界中から人の集まる大都市へと変貌するだろう。一方、地方に住まいを持てば固定資産税が大幅軽減されるなど税のメリットで地方に住むことを奨励することも必要である。こういった新しい都市計画の構想が必要ではないだろうか。
 交通網の高速化も重要だ。日本の幹線を時速五百キロ以上で結ぶ高速リニア新幹線をつくり、最高時速が晴天時は百六十キロ、雨天時は百十キロの、新たなほとんど直線で浸透舗装の新型高速道路も建設、従来の高速道路は全て一般道と結んで無料道路とする。物流の基本は海上輸送と航空輸送とにし、戦略的ハブコンテナ港を整備し、コストを下げて東アジアの海運の拠点とする。航空輸送は関西空港を貨物のハブ空港にする。また、羽田空港と東京駅と成田空港をトライアングルに五分・十分で結ぶ高速リニア鉄道を造り、両空港を一体化し、旅客のハブ空港とする。日本中の航空貨物は一旦関西空港に集め、ここで仕分けされて、全国へと送られていくことになる。また東アジアを訪れる人は、必ず一旦羽田・成田空港に到着。ここから中国や韓国、台湾などへの便に乗り継いでいくようにするのだ。羽田・成田空港に路線を誘致するため、この両空港の離着陸料は無料にし、空港に隣接して経済特区を設けカジノを解禁し、カジノホテルを造り、免税品やハイテク商品を売る巨大モールも建設、ここからの収入で空港運営費を賄うのだ。無駄の象徴ともいわれてきた地方の空港は、まず貨物ハブの関西空港からの便で賑わせ、さらに規制を緩和して、小型飛行機が地方空港を便利に利用できるようにする。小型飛行機の免許の取得ももっと簡単にし、また飛行機の車検にあたる耐空検査にももっと費用がかからないようにして、一般の人々でも手軽に小型飛行機が使えるようにする。アメリカであれば、二~三万ドル(約百八十万~二百七十万円)も出せば中古の小型飛行機が購入でき、何人かの飛行機好きが集まって飛行場を作って、近くに家を建てて暮らすなど、自由な飛行機ライフを満喫している。ローカル空港の活用のためにも、小型飛行機の規制緩和はぜひ行うべきだろう。
 研究開発投資は初年度一括償却を認め、先端医療やナノ・バイオ・ITなどのハイテク技術開発を国が全面的にバックアップする。先端医療や遺伝子検査に基づく個別薬品等の製造技術を高め、世界に向けた総合病院を整備して、世界中の富裕層が人間ドッグや最先端治療を受けに日本にやって来るようにする。こういった先端科学技術立国を推進する政策は非常に重要だ。

歴史を学んだ若い人々が誇れる国日本を再興する

 安全保障を考える時、抑止力として最も強力なのは、やはり核兵器だ。NPT(核拡散防止条約)下にいる日本が、独自の核開発を行うことには抵抗が多い。当面はNATO加盟五カ国が行っている、有事にはアメリカから核兵器をレンタルするというニュークリアシェアリングを導入するしかないだろう。また、どんどん戦争がハイテク無人化していく中では、日本のゲーム技術が軍事でも威力を発揮するだろう。実際昨年十一月にはアメリカ空軍がソニーのゲーム機・PS3を二千二百台購入して、スパコン並のコンピューター・クラスターを作る予定だという報道が行われた。さらにすべての爆弾の母と呼ばれている小型原爆並みの破壊力を持つMOAB(モアブ)や地中貫通爆弾(バンカーバスター)のような高性能な通常兵器を日本の技術力を駆使して開発し、抑止力として攻撃兵器を装備する。現在の自衛隊の兵器はアメリカ製が多く、それらの技術の中枢部分は日がたてば機能しなくなるブラックボックスとなっていて、日本ではメンテナンスできない。ナビシステムや兵器のためのソフトウェアもほとんどアメリカ依存で、アメリカの意に沿わない戦いには役立たない。自衛隊はアメリカの植民地軍としての機能しか果たせていない。戦争に巻き込まれないためにも、独立自衛、自らの意志で戦争を始めることも回避することもでき、アメリカにも国連にも頼ることのない全方位の軍隊を作らなければいけない。その軍隊は、日本の規模に相応した他国に脅かされない抑止力を持つための攻撃力を保有することが絶対に必要だ。
 膨張する中国、暴走する北朝鮮に翻弄される現在の東アジアでは、日本が平和の要としてパワーを発揮すべきだ。日本を中心として、韓国や台湾、フィリビン・インドネシア・マレーシア・インドなどが中国の膨張を阻止する勢力とネットワークを組む。このネットワークを背景に日本がアメリカと対等互恵な関係を築けば、戦争の可能性の少ない安定した東アジアが実現するのではないだろうか。
 選挙であれば、本来こうした国防論までを含めて論点として戦うべきなのに、今回の参院選の焦点として菅首相は「政治と金の問題」を隠し、小沢氏を守るためとバラマキ非難を避けるために突然消費税増税論議を持ち出した。それが逆効果となって参議院での過半数割れとなった。選挙後は検察審査会で二回目の起訴相当の判断が下り、小沢氏は強制的に起訴されてしまい、離党を迫られる可能性が非常に高い。さらに九月の民主党代表選を巡って菅首相と枝野幹事長の責任論が再燃、党内でのせめぎ合いの末、民主党分裂という事態も起こりうるだろう。そうなれば、自民党と民主党の志を同じくするものが大連立を組み、真正保守の政策を掲げて結集、政権を奪取して誇れる国日本の再興を目指すという展開になるのではないか。多くの人が間違った歴史認識を持った全共闘世代は六十歳前後。もう五年もすれば、世の中からリタイヤする。一方ネット世代である若い人々は、歴史を知らないだけで、考え方はニュートラルだ。私が主催する「真の近現代史観」懸賞論文の入選作などを読んで勉強する若者が増えれば、「誇れる国、日本」の再興を目指す真正保守の党が安定政権を作り、五年、十年後には、アインシュタインの予言通り、日本がアジアの、そして世界の盟主となるのではないでしょうか。私はこうなることを期待する。