社会時評エッセイ

日本の三権は全て腐っている

藤 誠志

検察の捜査方法は極めて不公平だ

 九月十一日の新聞各紙の朝刊一面では、前日に出された厚生労働省の村木厚子元局長の無罪判決が大々的に報じられていた。産経新聞では、『障害者団体向け割引郵便制度をめぐり偽の証明書を発行したとして、虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた厚生労働省元局長、村木厚子被告(五四)の判決公判が十日、大阪地裁で開かれた。横田信之裁判長は「検察の主張は客観的事実と符合しない」として無罪(求刑懲役一年六月)を言い渡した』『横田裁判長は、村木元局長らの関与を認めた供述調書について、「信用性が不十分」と指摘。民主党の石井一参議院議員(七六)の口添えによる「議員案件」だとする検察側主張についても、「認定できない」と判断し、検察側が描いた構図を否定した。判決を受け、検察当局は控訴の断念も視野に入れ、検討を始めた』という。判決骨子の中では、『元局長が「凛(りん)の会」を障害者団体と認める偽造証明書を発行した事実はない』、『部下だった元係長が証明書を作成したことは認められる』が『元係長が元局長の指示で証明書を作成した事実はない』、『凛の会側や元係長との共謀は認められない』と、元局長に関しては検察の主張はまったく認められなかった。
 この裁判における大きなターニングポイントは今年の五月にあった。朝日新聞によると、検察は『捜査段階の上村被告(注:元係長のこと)らの供述に基づき、塩田元部長の指示を受けた当時課長の村木元局長が上村被告に証明書を不正発行させたと主張していた』。ところが、『横田裁判長は今年五月の公判で、検察側が証拠採用を求めた上村被告らの供述調書計四十三通のうち三十四通について、「検事の誘導で作られた」などとして採用しないと決定』したのだ。
 判決後『大阪地検の大島忠郁・次席検事は、「判決内容を精査し、上級庁とも協議の上、適切に対応したい」とのコメントを出した』(読売新聞)と報じられているが、五月の時点ですでに検察側の「負け」は決まったも同然だったはずだ。検察側は無罪になることがわかっていながら起訴を取り下げることなく裁判を続け、判決が出ても未だにこんなコメントを出し続け、おわびの言葉など一言もない。強制捜査などの前に事件の筋立てを作り、それに沿った形で証拠を集めたり、供述調書を作るという「供述調書中心主義」の特捜部の捜査手法の危うさを浮き彫りにした事件であり、政治家を追い詰めるためなら、無実の人を罪に陥れることなど彼ら検察は平気なのだと改めて認識させられた。
と書いていたら、そこに、前代未聞と言ってもよい新たなスクープが飛び込んできた。九月二十一日付けの朝日新聞の一面の見出しは、『検事、押収資料改ざんか』。この村木元局長の事件で、『大阪地検特捜部が証拠として押収したフロッピーディスク(FD)が改ざんされた疑いがあることが朝日新聞の取材でわかった』『検察関係者は取材に対し、「主任検事が同僚に、『捜査の見立てに合うようにデータを変えた』と話した」というのだ。司法の権威の失墜を恐れた最高検は即日『証拠隠滅容疑で大阪地検特捜部主任検事を逮捕』した。『最高検は検察側の思い描いた事件の構図に沿うよう改竄した疑いが強いとみて全容解明を進める』という。問題のFDは元係長の上村被告が偽の証明書のデータなどを入れていたもの。最終更新日時が二◯◯四年六月一日であり、この日時で特捜部は捜査報告書を作成。結果、村木元局長による上村被告への証明書発行の指示が六月上旬とする検察の筋立てと矛盾を起こし、村木氏の無罪へと繋がった。FD自体は証拠として提出されなかったが、もし出されていれば、改ざんによって検察の筋立て通りに六月八日に証明書が作成されたと認定されたかもしれず、村木氏の無罪が危うくなった可能性もある。一体日本の検察はどこまで腐っているのか。
 一方、強大な権力を持つ民主党の小沢一郎氏の捜査の進展は非常に遅い。元秘書の石川知裕衆議院議員や池田光智氏、公設第一秘書だった大久保隆規氏と三人もの秘書が逮捕されたにもかかわらず、村木元局長に対して行なったような強引な逮捕や起訴は小沢氏には行われなかった。検察の捜査は極めて恣意的で不公平である。それを良いことに、あろうことか小沢氏は民主党代表選挙に出馬、結果敗れたが、そもそも総理の座を狙うなど茶番劇にもほどがある。一体、この国の司法、立法、行政はどうなっているのか。国会議員は政党助成金や歳費をお手盛りし、自らの逮捕を逃れるために総理を目指す。検察は自ら作ったシナリオを押し通すために証拠を改竄してまでも無実の人を起訴し、裁判所にほとんどの供述調書が証拠採用されなくても裁判を続行し、無罪判決が出ても控訴をちらつかせる。官僚は国益ではなく省益を第一に考え、埋蔵金を貯め込み、天下り先を作ることばかりを優先してこの国を官僚による官僚のための官僚国家ともいえる非効率高物価の官僚天国としてしまった。

小沢氏が犯した罪は桁違いに凶悪なものだ

 そもそも民主党の元幹事長である小沢一郎氏にかけられた疑惑は、村木元局長とは比較にならないぐらい、桁違いに大きなものだ。この国をねじ曲げることになりかねない凶悪犯罪である。田中角栄や金丸信を親分と仰ぐ小沢氏は、自民党離党後次々と新党を立ち上げ、その自ら作った党をまた次々と解散、残っていた政党助成金を自分の政治団体へと横取りすることで、私腹を肥やしていった。三月号の本稿でも私はこの件に触れ、『その金額は新生党の解散時には九億二千万で、この内、約五億円は国から党に支給された「立法事務費」で、自由党解散時には政党助成金として支給された公金分だけで三億八千五百万円から五億六千万円が含まれ、その他の資金と併せて十三億六千万円に及ぶという。一月に財務大臣を辞任した藤井裕久氏は、自由党の幹事長を務めており、この金の流れに関与していたといわれている。年末に藤井氏が検査入院したというのも、実はこの金の流れについて検察から事情聴取されていたのではという噂もあるぐらいだ。藤井氏が財務大臣を辞めたのは、小沢幹事長がいずれ逮捕されると感じたためではないだろうか。私の見るところ、小沢幹事長の逮捕は早晩必至だ。ひょっとしたら小沢氏は先手を打って、幹事長を辞職して逮捕逃れをし、しばらく表舞台から身を引いて、闇将軍として君臨する道を選ぼうとするかもしれない』と書いた。この通りに小沢氏は幹事長を辞任。そして代表選に敗れた今、闇将軍になるしか政界で力を持ち続ける方法はない。
 同じ号で私は、小沢氏と心中して首相の座を下りた鳩山由紀夫氏が受け取っていた「子ども手当」についても言及した。『相続税対策なのか、生前贈与として架空名義の政治献金に見せかけた金が分散されて偽装献金され鳩山氏に渡っていたにもかかわらず、国会で母親からの資金の提供について「私の知る限りではそんなものはないと信じている」と説明したのに、その後に氏が非を認めて五億七千五百万円の贈与税を納付した。しかし延滞税や重加算税の支払いはどうしたのか?この贈与されたお金が政治活動に使われたのであれば個人からの政治献金の上限、年百五十万円をはるかに超えている。単に贈与された金額の贈与税を払っただけで、それ以上の罪は不問になってしまっている。これも政治資金規正法違反であり、脱税である。脱税と指摘されても、知らなかったと主張して後から税金を納めれば罪に問われないのであれば、脱税罪などそもそも存在しない。いったいどうしてこの様な事態となっても、国税庁が査察に入れないのか…?メディアの報道スタンスがそのまま捜査当局・税務当局の甘さに繋がっていると言える。メディアも検察も国税も若い人が頑張っているのに、上層部は全共闘世代が作った民主党政権の崩壊を恐れてこれを阻んでいる。これはまさに二年ほど前、こぞって田母神前航空幕僚長を批判した日本を覆う社会構造と言える』。日本は何かがおかしくなっているのだ。

三権全てが腐っているのはアメリカ占領時代が原因だ

 そもそも三権分立とは、司法・立法・行政の三つの権力がそれぞれ独立をしていて、相互チェックをすることで成り立つシステムだ。さらに第四の権力としてのメディアが加わることで、本来であればダブルチェックがかかるはず。ところがこの四つがすべて腐りきっているのが今の日本だ。その理由は戦後六十五年経っても薄まることのない、アメリカが占領時代に行ったマインドコントロールである。終戦直後、アメリカは日本が再び強国とならないよう、そして東京大空襲や広島・長崎への原爆投下といった戦時国際法違反の民間人虐殺という戦争犯罪を覆い隠すために、東京裁判によって日本がアメリカよりもさらに悪いことをしたというイメージを日本人に刷り込んだ。さらに多数の日本人インテリを高額の報酬で雇い、すべての出版物・報道を検閲させ、戦前戦中に出版された日本を評価する書籍を焚書にし、アメリカにマイナスな記述は、後で証拠が残らないようすべて書き直しをさせたのだ。この検閲に加担したインテリたちがその後、進歩的文化人などと世間でもてはやされるようになるが、売国的な行為を行ったという意識があるために、自ら検閲を行っていたことを告白するものは一人もいなかった。これらのインテリは官僚からメディア界、政界、法曹界へと浸透していき、ステルス複合体となり阿吽の呼吸で自分たちを守る組織を作り、戦後の教育を歪めて、日本の誇れる歴史を教科書からすっぽりと消し去り、その代わりに中国などが謀略情報戦の一環として、世界のメディアを惹きつけるために捏造した南京大虐殺や従軍慰安婦など、ありもしないことを載せている。間違った教育の下、間違った報道を聞いて多くの国民が育ってきたために、皆がマインドコントロールされてしまっているのだ。
 本来、日本の強みは、国家自体が天皇を家長とする大きな家族だという意識にある。大家族制度は日本という国の根幹となっていた仕組みだったのだ。かつてはどの家にも家長が存在し、長男に家督を相続させることで秩序ある家族社会国家を築いてきた。これが今は根底から破壊されている。百歳以上の高齢者がこれほどまでに行方がわからなくなっているのも、家族が崩壊しているからだろう。また行方不明者とされている人の一番多い年齢層は、家出や家族と連絡をとらない十代・二十代だ。核家族から個家族へ、極端な場合は、四人家族が父親は単身赴任、二人の子どもは進学でそれぞれ一人暮らしと、四人ともバラバラに暮らしていることが当たり前という家族崩壊状態が現実となっている。ばらばらに暮らすためのコスト増によって豊かさを感じられない社会を作っているだけではなく、この崩壊が様々な今の日本の問題の原因となっているのである。

政界再編で真正保守政権の誕生を期待したい

 民主党の代表選挙は結局菅直人氏の圧勝で終わった。そもそも小沢陣営の菅批判はおかしかった。参院選の大敗原因を、菅首相が消費税に言及したからだという。そうではない。あれはそれまで一年間の民主党政権に対する評価である。しかももし鳩山氏が辞任せず、小鳩体制のまま参院選に臨んでいればどうだったか。あんな負け方では到底済まず、もっと大敗を喫したはずだ。菅首相は小沢批判で支持率をアップさせ、参院選での敗北をあの程度に留めることができた。今回の代表選でも国会議員では票は伯仲するかもしれないが、党員・サポーターや地方議員票では反小沢で菅首相が票を集めるはずだ …と思っていたら、結果、菅首相は党員・サポーター票で二四九、地方議員票が六◯、国会議員票が四一二の合計七二一ポイントだったのに対し、小沢氏は党員・サポーター五一、地方議員票四◯、国会議員票四◯◯の合計四九一ポイント。党員・サポーターで大差をつけての菅首相の圧勝だった。今後小沢氏をどう遇するのかが焦点となる。重用すれば、今回の党員・サポーター票でもはっきりと見えた「反小沢」の世間の反発をかうことは必至。さりとて冷遇すれば、小沢氏が党を割って出ることも充分に考えられる。この一年間、民主党政権を見てきたが、とてもじゃないがこの政権にこれから三年間も日本の舵取りを任せることはできない。一日も早く政界再編を行い、真正保守のリーダーが政権を担う時代が来ることを期待したい。
 百歳以上の不明老人の問題や我が子を餓死させる母親の出現など、以前はなかったような事件が発生するのは、三権が全く機能していない今のこの国では当然のことだろう。一日も早くかつてアインシュタインが世界の盟主となる「尊い国」と呼んだ、誇れる国・日本を再興しなければならない。村木元局長の無罪判決を聞いて、私はそういう思いを新たにした。