社会時評エッセイ

アジアの平和のために、 安倍政権の長期化が必要だ

藤 誠志

「反腐敗運動」を前面に出し政権基盤を築いた習近平

六月十三日付けの日本経済新聞に「習主席、基盤固め一段落」という見出しの記事が出ている。「中国共産党の習近平指導部が一一日に党最高指導部経験者の周永康氏に無期懲役という厳罰を下し、反腐敗を名目とした習氏の権力基盤固めは大きな節目を越えた。次の焦点は、最高指導部を大幅に入れ替える二〇一七年の党大会だ。習氏は思い通りの人事を進めるため、引き続き反腐敗運動をテコに党長老や軍にもにらみをきかせる」。「反腐敗闘争と改革を全面的に進めていく」と「周氏がかつて影響力を誇った国有石油大手、中国石油化工集団(シノペック・グループ)は一二日、幹部を集めた会合で習氏への忠誠を誓った。政府各機関も同様の会合を開いたが、今のところ党内に動揺はみられない」「一一日に公表された判決で初めて明らかになったのは、五月二二日に周氏の初公判を非公開で開いていたことだ」「習氏は二三日夜に北京の人民大会堂で、訪中した二階俊博自民党総務会長らを前に日中関係の改善に意欲を示した。このときすでに周氏の問題に決着を付け、党内からの批判を恐れることなく、日中関係に前向きな姿勢を打ち出せる体勢を築いていたことになる」「党内を見渡す限り、当面、習氏を脅かす有力者は見当たらない」という。
 鄧小平のお墨付きで上海の一地方書記から国家主席に抜擢された江沢民や、鄧小平の意向もあってその後継となった胡錦濤とは異なり、二〇一三年三月に国家主席となった習近平は、従来の主席よりも強い権力基盤を確立することを目指して、反腐敗闘争を開始した。中国では古来から賄賂が文化となっており、中央の党幹部も地方役人も賄賂で蓄財して子供を海外に留学させ、資産も海外に移していつでも中国から逃げ出せるようにしている。これに対し「虎もハエも叩く」と大物から下級官僚まで腐敗を見逃さないと厳しい態度で汚職撲滅に乗り出した習近平だが、ターゲットは江沢民派、胡錦濤派であり、太子党など自らの派閥には触れていない。同じく六月一三日の産経新聞では「習氏が推進する反腐敗運動は、江沢民元主席と胡錦濤前主席がそれぞれ率いる派閥の政治家を次々と摘発した一方、習氏自身の息がかかった太子党(元高級幹部子弟)の関係者らをほとんど温存した。汚職撲滅は口実であり、習氏一派が権力を掌握するための粛清だと指摘する声もある」と報じている。今後もさらに江沢民派の李鵬元首相や胡錦濤派の温家宝元首相ら大物政治家が反腐敗の標的になるのではという見方も出ている。

 

軍制服組元トップの粛清で人民解放軍も掌握

また人民解放軍の制服組トップを務めた徐才厚や郭伯雄も、収賄で失脚に追いやられたり取り調べを受けたりしている。これは習近平が軍部を掌握するための行動だろう。確かに彼はその必要に迫られていた。この月刊Apple Town2014年12月号のエッセイのタイトルは「混乱する世界を俯瞰し日本再興のチャンスとせよ」だった。その中で私は「軍を掌握しきれていない習近平体制の危うさ」という見出しで以下のような文章を書いた。「この混迷の一番大きな原因は、アメリカによる一極世界支配体制が崩壊しつつあることだ。二〇一三年九月のテレビ演説でオバマ大統領が『アメリカは世界の警察官ではない』と宣言したことから、世界の歯車は狂い始めた。その一番顕著に現れた弊害は、選挙で選ばれた親ロシア派大統領のヤヌコビッチが西側が仕掛けたデモで追放されたことで始まったウクライナ問題を契機に、ロシアが武力侵攻してクリミア半島を併合したことと、それに対する欧米の経済制裁である」「またアメリカのシェールガス・オイル開発の伸展に伴って、中東への原油の依存度が低下し、原油価格の下落に繋がっていて、その肩代わりに福島第一原発事故を起こした日本の原発の再稼働を阻止しようとして情報謀略戦を駆使し不安を煽り続けている」「読売新聞の記事によると『ロシアは、原油と天然ガスに輸出の約七割、連邦予算の五割を依存しているいびつな経済構造』であり、原油安の影響をストレートに受けて経済が停滞、通貨のルーブル安になっているのだ。その結果発生したインフレによる食料品高騰によって、ロシア国民の生活が苦しくなってきている。今や世界は密接に結びつきあっていて、様々なことが原因と結果となって影響を及ぼし合っている」「経済状態が思わしくないときに政権を維持しようとすれば、反撃してくる心配のない相手に対して、強硬な外交攻勢をかけるのが常套手段だ。しかしその常套手段の一環かと思っていたら、それよりも遥かに恐ろしい、権力者が権力の掌握ができていない事態だということを露呈したのが、現在の中国だ。十月十二日付けの日本経済新聞の『風見鶏』欄に以下の記事が出ていた。『九月一七日からの習氏のインド訪問の数日前。現地からの報道によると、中国軍がいきなり、インド側に越境したのだ。これは国境紛争後も、国境が確定していないラダック地方でのことだ』『越境した兵士は最大で一〇〇〇人を超えた。習氏がインドに着き、「友好と協力」を呼びかけた最中にも彼らは居座っていた』『インドをけん制するため、習氏が越境を許したとの観測もある。だが、有力な説は、習氏が知らないうちに部隊が動いたというものだ。日米の安全保障当局者らに聞いても、後者を信じる向きが多い』『習氏がインドに飛んだのは中印友好を唱え、日米をけん制するためだ。越境騒ぎでそれは台無しになり、習氏のメンツもつぶれてしまったというわけだ』『今年に入り、中国軍機は自衛隊機に二回、米軍機にも数回、異常接近した。中国の「挑発」との報道もあったが、日米当局者は「パイロットか、現場司令部の独断だった」とみる』という。これらの事実は、習近平主席が掌握しきれていないところで、軍事衝突もあり得ることを意味している。非常に怖いことだ」と書いたのだが、今回のトップ粛清で、ようやく習近平は軍の権力を掌握したのではないだろうか。

 

事故や経済状況の悪化で苦境に陥った中国・韓国

「日本は良い国だ」と主張した論文で、二〇〇八年の第一回「真の近現代史観」懸賞論文で最優秀賞を獲得した現職航空幕僚長の田母神俊雄氏を、時の麻生首相は更迭した。そのこともあって翌二〇〇九年八月の総選挙で自民党は敗北し、民主党の鳩山政権が誕生した。民主党政権を舐めてかかった中国と韓国は、途端に日本に対する攻勢を強めた。尖閣諸島の領有権問題が先鋭化し、中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりをしたり、香港の活動家が魚釣島に上陸したり、中国の公船が常に領海侵犯を繰り返したりと中国は日本に対する挑発を続けた。韓国の李明博大統領(当時)は、国会議員である実の兄が収賄で逮捕されたことで、これまでの大統領のように自身も任期終了後逮捕されるという恐怖心を抱き、これを逃れるために大統領として初めて竹島に上陸したり、日本の天皇が訪韓したいのであれば跪いて謝罪せよと発言したりと急に反日姿勢を前面に打ち出してきた。  二〇一二年十二月に自民党が政権を奪回し、保守派である安倍晋三氏が首相に就任した。翌二〇一三年二月に韓国では朴槿恵大統領が、三月には習近平主席が就任と、この三つの国の政権交代が数カ月の間に行われた。朴大統領は、前任者の李明博が反日転向によって任期後の逮捕を免れたのを見て、また自身の父親の朴正煕元大統領が日本の陸軍士官学校への留学経験を持つ満州国軍の将校で親日派だった事実を懸念したのか、最初から反日スタンスを露わにし、世界中に従軍慰安婦問題を「告げ口」し始めた。安倍首相がこんな圧力にも屈せず、中韓に正面から対峙しない迂回戦略をとり、その一方でアメリカとの連携強化を図ってきた。また積極的平和主義を唱えて地球儀俯瞰外交を展開し、中韓を取り巻くアジア諸国との友好関係も強化してきた。首脳会談を拒否することで安倍退陣の圧力を掛ける中韓に対しても、常に門戸は開いていると柔軟に対応してきた。これらのことは高く評価されていいだろう。
 海洋権益の拡大を狙う中国は、尖閣諸島のある東シナ海から南シナ海をターゲットに定め、南シナ海ではスプラトリー諸島の岩礁の埋め立てを行い、そこに滑走路や砲台を設置しようとしている。中国軍の孫建国・副総参謀長もこの埋め立てが軍事目的であることを明確に認めている。バブルが崩壊し経済が明らかに停滞してきている状況の中、政権掌握のために反腐敗運動を続けてきた習近平だが、軍制服組の元トップを排除して軍を掌握し、さらに党最高指導部経験者の周永康に厳罰を下したことで、確かに政権基盤は一応の安定をみた。そして経済の回復のためにはやはり日本が必要と、昨年十一月と今年四月に日中首脳会談を行い、日本との距離を縮めようとしている。日本では経済立て直しはデフレ脱却からと、安倍首相は超金融緩和策を行い、対ドルの為替レートは、安倍首相が自民党総裁になった時の三分の二の円安に株価が二・五倍となった。その結果、日本は輸出産業を中心に経済が活発化し、さらに海外から観光客が続々と押しかけている。逆にウォン高に苦しむ韓国は輸出が振るわず観光客も激減。さらにMERS感染の拡大によって観光産業は決定的なダメージを受けつつある。
 韓国の安全軽視の伝統は根強く、昨年四月のセウォル号沈没事件の後も、野外コンサートで換気口の崩落事故がおきたり、体育館が雪の重みで崩壊したりで、それぞれ十名以上の人が亡くなっている。中国でもこの六月に長江で客船が転覆し、四百人以上の人が亡くなった。竜巻が原因といわれているが、セウォル号同様、バランスを崩すような無理な改装が原因ではないかという声もある。南京大虐殺や従軍慰安婦の歴史問題や尖閣諸島や竹島の領土問題で、日本に言い掛かりをつけてくる中国と韓国両国が事故や経済状態の悪化により、苦境に陥っている。習近平は政権基盤の安定を機に日本に経済回復の希望を託そうとしているし、朴槿恵は日韓基本条約調印五十周年を機に急に日本に歩み寄ってきて「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録に協力する方針を示してきた。このまま行くと韓国の経済状態は絶望的となり、朴槿恵は病気を理由に任期半ばで大統領を投げ出さざるを得なくなるのではと、節操もなくいきなり方針転換をしてきたものと思われる。

 

血腥い世界の国歌の中で格調高さが際立つ「君が代」

世界は昔も今も情報謀略戦を繰り返しているのだが、誤ったメディアと教育で育った日本人はこの現実を見ようとしない。勝兵塾の塾生の一人が、資料として世界の国歌を訳したものを持ってきた。次はその六カ国の国歌の歌詞を翻訳したものである。
「鍛えられし わがつわもの 攻めくる敵 打ち破り 断固と守る 尊き国 わが祖国に栄あれ。 栄光の民よ 自由の祖国 結ばれしその誉れ 
旗のかげで 導けよ勝利の為進めよや」(ソ連)
「立て、奴隷となるな、血と肉をもて、築かんよき国。 立て! 立て! 立て! 心合わせ、敵にあたらん、進め、敵にあたらん。進め、進め、進め、進めよや。」(中華人民共和国)
「ゆけ祖国の国民 時こそ至れり 正義の我らに。旗は翻る 聞かずや野に山に 敵の呼ぶを悪魔の如く 敵は血に飢えたり 立て国民 いざ矛とれ 進め進め 仇なす敵を葬らん」(フランス)
「おお神よ 我らが神よ 敵をけ散らし降伏させ給え 悪らつな政策と奸計を破らせ給え 神こそ我らが望み 国民を守らせ給え」(イギリス)
「おお激戦の後に 暁の光に照らし出された星条旗が見えるか
夜どおし砲弾が飛びかった後に 我らの星条旗が翻っている。 自由の祖国 勇敢な家庭 星条旗をふれ 星条旗をふれ 戦闘がやんで微風が吹く中に 濃い朝霧の中 見え隠れしているものは何か これこそ我らが星条旗 神よ! 星条旗をふり続け給え 自由の祖国勇敢な家庭の上に」(アメリカ)
「君が代は 千代に八千代にさざれ石の いわおとなりて、苔のむすまで」(日本)
 「君が代」以外の国歌は、みんな、血腥く勇ましい軍歌調だと痛感されるのではないだろうか。血とか肉とか敵と戦えとか、血に飢えた敵とか、実に戦闘的なものばかりの烈しいものである。こういう国家の方針の下にこれらの国民は小学生時代から毎日国家に忠誠を誓わされてきており、これでは戦争が絶えないのも仕方がないかとさえ思われる。
 それに比して日本の国歌、「君が代」の歌詞の、何と平和でおおらかで悠久で格調が高く素晴らしいか、歴然とその違いが分かるであろう。この歌詞は、今から約一千年前、醍醐天皇が紀貫之に命じて編集させた日本最古の歌集「古今和歌集」巻第七、賀歌の第三四三番、読み人知らず、として掲載されている「わが君は、千代にやちよに、さざれいしの いはおとなりて、こけのむすまで」がルーツである。長寿を祈り願う祝い歌として人々に広く愛唱されていったもののようである。上から強制して歌われたものではない。しかも、作者は「読み人知らず」なので無名の民の歌である。
 「わが君」とはあなたのことで、敬愛を込めた言葉である。「君」は広く対者をいう。万葉時代、そして現在も、皇居では毎年、「歌会始め」があり、老若男女、地位名誉に無関係に歌を募集し、入選者は皇室に呼ばれる。こんな庶民的な皇室・王室は世界に無いだろう。このように素晴らしい日本の国歌は世界に誇りうるもので、先祖の英知に感謝しなくてはならない。
 「君が代」の中の「君」を天皇だと言う人がいる。しかし、天皇は、「大君」であって、「君」などと軽く表現することは、当時は畏れ多くて、とても言えなかったはずだ。「君が代」を恋の歌、という人もいる。なんとおおらかで平和な国歌だろう。世界でたった一つの優しくて平和な国歌を大切にしたい。
 諸外国の政権を見ると、十年以上の長期政権は当たり前だ。日本もこれまでのように一年や二年の短期政権を繰り返してはならない。安倍政権は十年以上続く長期政権を目指し、日本を立て直し、誇れる祖国・日本の再興を果たして欲しい。そして自ら招致に成功した東京オリンピックの開会式で、安倍首相が「君が代」と共に開会宣言を行うのが理想だ。中国、韓国にしっかり対応していくためにも、安倍政権が長期政権となるべく、私も最大限のサポートをしていくつもりだ。