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ビッグトーク241(BIG TALK) 保守政治を再生して国家戦略を策定 日本はアジアのリーダーになれ

三十六歳で衆議院議員に初当選してから五期連続当選。自民党政権でも中堅議員として要職を歴任、その全てを捨てて今年の愛知県知事選挙に出馬、見事に圧倒的な得票数で当選した大村秀章氏。元谷代表が塾長を務める「勝兵塾」の講師・特待生となった氏に、日本の政治がこれから立脚すべき思想、国家戦略を立案することの重要性などをお聞きしました。

競争力のある地域は自らの力で世界と戦うべき


元谷 
 
 本日はビッグトークにご登場いただき、ありがとうございます。大村さんには以前からご登場いただきたかったのですが、なかなかチャンスがなくて…。また今回発足しました勝兵塾の講師・特待生もお願いできるということで。よろしくお願いいたします。

大村 こちらこそ、よろしくお願いします。

元谷 
 今年二月の愛知県知事選では、圧倒的な得票数で当選を果たされましたね。元谷芙美子アパホテル社長が、テレビなどでの大村さんの姿を見てすっかりファンになっていまして、選挙前から「この人は当選する」と断言していました。

大村 一月のアパホテル〈名古屋錦〉EXCELLENTのオープンの時には、名古屋市長の河村たかしさんと一緒に芙美子社長とお会いしました。社長に「当選は絶対大丈夫」と力水をつけてもらいましたよ。

元谷 
 社長が応援した候補者は、なぜかみんな当選するのです(笑)。

大村 勝利の女神です(笑)。

元谷 
 しかし五期連続当選を果たしている衆議院議員の座を投げ捨てて、リスクをとって知事選に出馬したのは大変立派なことです。

大村 これで自民も民主も既成政党を全て敵に回すことになってしまいましたが(笑)。私は「今のままの日本でいいのか。どんどん衰退してしまうのではないのか」という強い危機感を持っていて、これが今回の愛知県知事へのチャレンジに繋がったのです。

元谷 
 自民党はどんどん左傾化し、最後には「日本はいい国だ」と主張した田母神俊雄航空幕僚長を更迭するまでに落ちぶれました。そもそも選挙当選互助会でしかない民主党は、この更迭に際して自民党政府の任命責任を批判。私はどちらの政党も支持することができません。これは世の中を変えなければ…と強く思ったのが、今回勝兵塾を作ったきっかけなのです。日本に元気がないのは、政策に問題があるから。大村さんが会長を務める地域政党「日本一愛知の会」のメインテーマは規制緩和と減税だと思いますが、この二つがまさに私も大切だと考えています。

大村 その通りです。今の国政は全国一律に規制を行っています。しかし全国が一斉に底上げしていくなど、到底無理でしょう。首都圏、大阪圏、名古屋圏など競争力のある地域がまず発展し、世界と戦って勝っていかないと、日本は将来雇用もままならない国になってしまいます。

元谷 
 そこで愛知の独立ということを主張しているのですね。

大村 はい。外交や防衛、年金や金融は国が行う仕事で、これら国の政策を実行するためには既成政党も当然必要です。しかしそれ以外の事は、力のある地域には任せていいのではないかと。海外からの企業誘致も「日本に来てくれ」では最早通用しません。具体的に「名古屋に来てくれ」「大阪に来てくれ」「神奈川に来てくれ」じゃないと。

元谷 
 なるほど。もう一つ、日本は税金が高すぎるのです。税金の六割が人件費に消えています。日本は官僚による官僚のための官僚国家となっていて、行政機構が非常に非効率。もっと効率化を追求することで必要な税金の額は下がり、減税が可能になるはずです。

大村 そうなのですが、国は大きすぎて動きがとれないのです。しかし愛知県に任せてくれれば、現状に合わせてもっといろいろな手が打てますよというのが、「日本一愛知の会」の主張なのです。

元谷 
 二月の知事選の後、四月に愛知県議会選挙が行われましたが、「日本一愛知の会」にとっては思った以上に厳しい結果でした。震災がなければ相当な議席数を獲得できたのではないでしょうか。減税という大きな流れに、震災からの復興のための財源話が水を差した感じ。五%の法人税減税の話も立ち消えになっています。メディアの報道スタンスも減税から増税容認へと変わりましたから、これが逆風になりましたね。

大村 
 日本全体がそうです。この震災で日本の風景が一変しました。

元谷 
 天災は何十年、何百年の間には必ず起こるものですから、しょうがないと思わなければならない側面もあります。しかし今回は人災に、そして政治的な思惑が絡む「菅災」とでもいうべきものに発展しています。そもそも菅首相は外国人からの献金疑惑で辞任寸前だったのです。ところが震災で疑惑は吹っ飛び、今は自分の政権の延命のために国民を犠牲にしている。これまでも菅首相には目立った成果はありませんが、期限は不明にせよ辞任を表明した以上、最早レームダック以外の何者でもありません。何の政策も実現できないのに、首相の座にいてどうするのかと言いたい。情けないことです。

浜岡原発停止要請で日本中の原発が停止の危機


大村 
 大震災だけなら今頃「復興だ!」と盛り上がっていたと思うのですが、終息の目処が立たない福島原発の事故があるために…。この事故は明らかに人災です。

元谷 そうです。初期段階から適切な対応をしていれば、水素爆発もメルトダウンも防げたはずです。また三月十二日の菅首相の現地視察も問題を悪化させました。

大村 大将は現場を信じて、動きたくても我慢をしないと。

元谷 変に原発の専門家気取りで、陣頭指揮を取って人気回復に繋げようと思ったのでしょう。

大村 パフォーマンス以外の何者でもありません。この未曽有の大災害の時にそんなことしか考えないなど…。浜岡原発を停止させたのも、延命パフォーマンスのひとつです。愛知県はトヨタ自動車など産業が集積する日本一の産業県で、中部電力の発電量の約半分を消費しています。その大切なエネルギー源を法律に基づかない形で停止するなんて…。定期検査が終了した原発が、今後再開できなくなる道を作ってしまいました。

元谷 その通りで、原発が立っている都道府県の知事達に大きな負担を与える事になりました。どの原発も賛成派と反対派の微妙なバランスの中で建設されています。定期検査で停止した原発の再開は知事が認めなければ事実上できませんが、菅首相の判断のおかげで再開を認められない原発が続出してきます。下手をすると、日本中の原発が止まる事態にまで発展しますよ。

大村 五月六日の夜七時過ぎに菅首相が記者会見を行って浜岡原発の停止要請を出したのですが、「何だこれは!」と思いましたよ。実は翌日の七日、私の携帯電話に菅首相が電話をしてきたのです。私は浜岡原発の立地県の知事ではありませんが、産業が集積する愛知県が日本復興のキーポイントという認識があったのでしょう。菅首相は「ご理解をお願いします。後は万全を期しますから」というのです。私は「私のところにも浜岡止めろというメールなどが大量に来ましたが、そこは堪えました。なぜなら法律に基づかずに浜岡原発を止めたら、次は柏崎刈羽、次は敦賀と日本中の原発がドミノ倒しで止まりますよ」と答えました。好き嫌いに関係なく、今日本中の原発が止まれば、日本経済が破壊されるのは間違いないことです。

元谷 菅首相は何と言っていましたか?

大村 「三十年以内に八七%の確率でマグニチュード八の地震が来る浜岡原発だけが特別なのであって、他を止めることはない」というのです。しかし同じデータで福島原発の地震の発生の確率はほとんどゼロに近かった。そんなデータをなぜ信じろというのでしょうか。また私は菅首相に「浜岡原発は再開できるのか」と聞いたのです。すると「二年後に防潮堤が完成すれば再開できる」と明言しました。でも公では菅首相ははっきりと再開の条件を表明していません。

元谷 今回の福島原発の事故の原因は「全電源喪失」です。これを防ぐ対策を行えば、原発事故のリスクは大幅に減少します。例えば非常用のディーゼル発電機の設置場所を高台に変えるとか、電源が喪失しても自らの熱を利用して原子炉の冷却が行える蒸気システムを設置することなどが考えられるでしょう。これらは二年もかからずに整備できるはずです。防潮堤は建設に時間もお金もかかり、さらにかなりの長さで作らないと、水が回り込んで侵入してくることになります。津波を正面から防ぐのではなく、被害を軽減するという発想で考えるべきです。住民に対しては、六階建ての防災マンションを海に向かって直角に二百メートル間隔で建設します。これなら津波を目視してからでも建物に逃げこんで助かることができるでしょう。

大村 おっしゃる通りです。菅政権は世論調査で浜岡原発停止を七割の国民が評価しているとして、「よかった、よかった」と思っているかもしれません。しかしこのツケは、今後の電力不足と経済停滞で支払うことになるかもしれないのです。政府も国民もそれがわかっているのか…。

元谷 そもそも鳩山前首相が温室効果ガスの二五%削減を掲げたこともあって、民主党政権の大方針は電力の五〇%を原子力発電で賄うというものだったはずです。そ
れをたった一回の地震でひっくり返すのはおかしい。もっと腰を据えて取り組み、むしろ震災の教訓を生かして対策を立てたから、もう原発は安心ですと表明、海外に売り込みに行ける程の自信を持つようになるべきです。

大村 そうです。ころころ変わるようでは、世界で日本人が信用されなくなります。

毛沢東の最大の業績は土地の国有化を行ったこと

元谷 あれだけの地震があっても原子炉自体が壊れなかった原発を私は信頼しています。これから行うべきなのは、電源喪失が起こらない、起こってもメルトダウンが起こらないより安全な原子炉を作ることでしょう。先日のサミットで菅首相がフランスで大歓迎されたのも、「脱原発」などと言って欲しくない原発大国フランスのサルコジ大統領の作戦です。これは見事に成功して、菅首相は自然エネルギーを増やすとは言いましたが、脱原発とは言わなかった。世界各国はこのように自国の国益のために戦略を練っています。こういうことがわかる政治家を作るのが、勝兵塾の役目だと考えています。

大村 まさにその通りで、国家には世界の中でどう戦って勝っていくかの戦略が必要なのです。

元谷 日本は先の大戦には負けましたが、その後経済的には勝ち続け、トヨタ自動車が世界一の自動車メーカーになるなど、経済大国として世界に誇る地位を獲得しました。今この経済大国の座を失ったら、日本に何が残るのか。しかしこの日本経済を駄目にしようとしているのが、まさに民主党政権なのです。

大村 経済・産業はもちろん大切です。これとは別に、私は国家の背骨となるべき思想が今失われていると考えています。

元谷 そうかもしれません。アメリカの占領政策が未だに日本社会に影響しているのです。特に敗戦利得者ともいえる東大法学部出身者を中心としたインテリが占領政策を継承し、こんなおかしな国にしてしまった。一度ガラガラポンで全てを変えてしまう必要があります。

大村 そうです。国としての考えや政治や経済をしっかりさせて、近隣諸国のリーダーシップがとれる国にしないと。

元谷 しかしアジア諸国のこの十年の変貌ぶりはすごいですよ。日本は追い抜かれるかもしれません。

大村 私は毎年中国を訪問しています。日本は街や空気もきれいで静かで住みやすい国です。しかし中国の都市のあの乱雑さの中の活力にも魅力を感じてしまいます。

元谷 その活力は中国人の国民性でもあるでしょうが、共産党の一党独裁国家の強みともいえるでしょう。九割の国民が貧困に喘いでいるのに、残り一割の人々が超高層ビルに住んで豊かさを謳歌しています。その成長ぶりはすごいのですが、このまま貧富の差が拡大した場合には、国が内部から崩壊する可能性が高まるでしょう。

大村 中国共産党の人が言っていたのですが、毛沢東の最大の業績は、土地の国有化を行ったことだそうです。道路を作るにも再開発をするにも、土地の所有権問題が一切なく、住民を追いだして建設が行えるのですから。これが今日の中国の発展の元だと言っていました。国全体の平均は低くなりますが、上海や広州など最先端の大都会は、日本の都会と全く変わらないですね。

元谷 そうですね。ただ今の中国は日本のバブル期と同じなのです。ビルはできても誰も住んでいなかったり使われていなかったり。この巨大なバブルが崩壊した場合の世界経済への影響は、あまりにも大きい。世界中が協力して、ソフトランディングを模索しなければなりません。

大村 なるほど、その通りです。一方今は世界中の大都市が競争状態になっています。日本の主要都市はこれまでは戦って勝ってきました。首都圏など、規模を見ればどう考えても世界一の大都市です。東京、大阪、名古屋などが、今後も世界で勝てるような政策を実行すべきでしょう。

加速度償却の導入が日本の景気浮揚の起爆剤に

元谷 世界で勝つためには、日本人の能力を引き出してやる気にさせる政策が必要なのです。例えば加速度償却を可能にすべき。研究開発費や設備投資をすぐに償却できるようになることが、企業には一番ありがたいのです。これで行われた研究は将来的に大きな日本の付加価値となります。

大村 
 私は県民税の一〇%減税を選挙公約にしていましたが、本当にやりたいのはこれだけではありません。税制全般を愛知県で決めたいのです。一番は法人に関する税でしょう。まずは建物や設備など減価償却資産の耐用年数を今の半分にしたいと考えています。これをやれば、企業の設備投資が一度に増え、景気が良くなります。また増えた生産設備は将来にわたって日本の付加価値となるでしょう。
元谷 税を最初から取ろうという発想から脱却すべきです。

大村 そうです。先取りしようというチンケな考えが景気の浮揚を妨げているのです。

元谷 さらに税金の無駄遣いの撤廃が大切です。しかし、民主党が行った仕分けは結局パフォーマンスだけに終わってしまいました。

大村 科学技術開発関連予算がいろいろと仕分けされましたが、将来のメシの種を切るなんて…。二番目じゃ駄目に決まっているでしょう(笑)。

元谷 日本は先端科学技術を育てて、科学技術立国を行うべきなのです。そのためには一番を目指さないと、諸外国に勝てません。

大村 こういう日本の得意技を伸ばすことが戦略だと思います。

元谷 そうです。その戦略を立てるのが政治なのです。私は日教組が行なってきたあまりにもいびつな平等教育が、日本をおかしくしていると感じています。世界の流れは逆で、どの国もトップエリートの育成に力を入れています。日本も優秀な人には力を伸ばしてもらい、それに相応しい処遇をして、国の牽引車となってもらう社会にしないと。現状では優秀な人が誇りを持てないのです。

大村 それも戦略のひとつです。

元谷 しかし今はその国家戦略がない。民主党は「政権交代」だけが目的だったので、いざ政権を取ってみると目的を失ってしまい、何をしたらいいのかがわからなくなっています。菅首相も首相になることが目的だったために、延命策以外の何の政策も打ち出せない。

大村 二〇〇九年の総選挙でも、民主党からはどういう国を作るのかというビジョンは聞かれませんでした。

元谷 言うと考えが異なる国民の支持を失うと思ったから言わなかった。主張を玉虫色にして、ごまかしで政権を獲得したのです。

大村 私が民主党政権で一番問題だと思うのは、政権に最も大切な外交と安全保障の基本的な合意がないことです。

元谷 だから「友愛の海」や「正三角形の関係」とか「少なくとも県外」などという鳩山発言で外交関係がぐちゃぐちゃに。鳩山さんは菅首相のことを嘘つきと言っていましたが、普天間基地問題で嘘をついた人間が何を言うかという感じでしょう。政治家にはもっと言葉に責任を持って欲しい。

大村 おっしゃる通りです。

元谷 しかし野に下った自民党にも生まれ変わるチャンスがあったのに…。

大村 今更ですが、安倍晋三さんがあの形で首相を辞めることになったのが今で
も断腸の思いなのです。

元谷 安倍さんは教育基本法を改正、国民投票法を制定し、防衛庁を防衛省に格上げするなど、わずか一年で数々の成果を挙げました。しかし「戦後レジームからの脱却」に反発したアメリカと公務員制度改革に抵抗する官僚の圧力によって心を病んで、辞めることになったのでしょう。私としてはもっと狡猾に立ち回って、首相として生き延びるべきだったと思っています。

大村 日本の政治の背骨は保守なのです。もう一度保守政治を再生して国家戦略を策定、日本をもっとオープンにしてアジアの活力を呼びこむべき。安倍さんにはその中心になって欲しいと今でも願っています。

元谷 私も同感ですね。安倍内閣以降、自民・民主とも碌な内閣が出てきていませんから。

大村 株価も下がる一方です。背骨がなく戦略がない国家には、外国人投資家も投資しません。

元谷 国としてはいろいろ課題山積ですが、せめて愛知県だけは正しい方向で頑張ってください。

大村 はい。世界と戦える名古屋圏を作っていきます。今後もご指導をよろしくお願いします。

元谷 最後にいつも「若い人に一言」をお聞きしているのですが。

大村 日本は非常にいい国ですが、突然こんな国が誕生したわけではありません。過去にいろんなことがあって、それらにめげない強さがあったから、今の日本がある。震災の後の今こそ歴史に学ぶべきでしょう。そして日本の素晴らしさに誇りと矜持を持って、日本を復興してアジアを牽引する責任を果たすために、それぞれの仕事を頑張っていくことが大切だと思います。

元谷 ぜひ勝兵塾では大村さんの力もお借りして、そのように国民をリードできる政治家を輩出したいと考えています。今日はありがとうございました。

大村 ありがとうございました。

大村秀章氏
1960(昭和35)年愛知県生まれ。東京大学法学部を卒業後、1982(昭和57)年に農林水産省に入省。1996(平成8)年自民党から衆議院議員選挙に出馬して初当選。以後5期連続で当選を果たす。小泉内閣では経済産業大臣政務官、内閣府大臣政務官、安倍内閣では内閣府副大臣などを歴任。愛知県知事選挙出馬を目指し、昨年末地域政党「日本一愛知の会」を設立、今年の知事選では愛知県での史上二番目の得票数を獲得して見事当選した。