BIGTALK

世界の問題を
解決できるかどうかは
若い人に掛かっている
Vol.341[2019年12月号]

エクアドル共和国大使館 特命全権大使 ハイメ・バルベリス
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APAグループ代表 元谷外志雄

二〇一八年に日本との国交百周年を迎え、今後日本との経済を中心とした関係をさらに深めていこうとしているエクアドル共和国。駐日特命全権大使のハイメ・バルベリス氏に、動植物の宝庫・ガラパゴス諸島をはじめとしたエクアドルの見どころや歴史、文化、産業等についてお聞きしました。

ハイメ・バルベリス氏

1957年生まれ。1981年エクアドルカトリック大学で法学の学位取得、1990年エクアドル中央大学で国際法学の学位取得。1979年エクアドル外務省に入省、アジア・アフリカ・オセアニア局長、アメリカ局長、北米欧州担当次官等を経て、2017年2月に駐日エクアドル大使に就任。

ガラパゴス諸島を含む
四つの異なる地域

元谷 本日はビッグトークにご登場いただき、ありがとうございます。以前から一度ビッグトークにお招きしたかったのですが、今回ようやく実現しました。バルベリスさんは大使として日本に来られて、どれくらいになりますか。

バルベリス 本日はお招きありがとうございます。日本に赴任して二年八カ月になりました。

元谷 それだけ日本にいらっしゃるのであれば、国内かなりいろいろな場所に行かれたのではないでしょうか。日本の印象はいかがですか。

バルベリス はい、いくつもの都道府県を巡りました。どこも美しく、日本は素晴らしい国だと感じています。まだまだ訪問したい場所があるのですが、四人の子供達が日本に来るタイミングに、家族で北海道や東北の方を巡ってみたいと考えています。

元谷 私は北米からカリブ海、中南米を含め、世界八十二カ国を訪問してきました。エクアドルへはまだ行ったことがないのですが、非常に興味があります。赤道直下になるのでしょうか。

バルベリス その通りです。エクアドルという国の名前は、スペイン語の「赤道」という言葉が由来です。首都のキトのすぐ近くを赤道が通っているのですが、キトはアンデス山脈の中腹、標高が二千八百五十メートルの高地にあります。ですから平均気温が年間十八〜十九度の常春の状態なのです。

元谷 思っていた以上に過ごしやすいのですね。

バルベリス エクアドルは四つの異なる地域からなる地形的に変化に富む国です。首都・キトがあるのはシエラと呼ばれる山岳地帯です。ここには国内最高峰の六千二百六十七メートルのチンボラソ山があります。海岸地帯はコスタと呼ばれており、ここにはエクアドル最大の都市であるグアヤキルがあります。この街は港湾都市であり、産業の中心で周辺も含めると人口が三百万人に及びます。これに対して首都のキトは政治の街ということになります。東部には熱帯雨林が広がるアマゾン地域があります。そして四つ目の地域がガラパゴス諸島です。エクアドルの国の名前を知らない日本の方でも、ガラパゴスの名前は知っているのではないでしょうか。

元谷 ガラパゴス諸島はエクアドルになるのですね。

バルベリス はい。これだけ地形、気候が異なるエリアがあり、エクアドルは地球上で最も生物学的多様性に富んだ十七の国の一つだと言われています。また民族的にも多様性のある国です。エクアドルには日本の本州と九州を合わせた広さの中に約一千七百万人の人々が暮らしていますが、その七割が先住民族と欧州系との混血であるメスティーソです。しかしその他、先住民族や白人、アフリカ系子孫まで様々な人種・民族の人々が暮らしており、文化も多様性を帯びています。公用語はスペイン語ですが、他に十四もの言語や方言が異なる先住民族のコミュニティにおいて使用されています。

野口英世で結ばれている
日本とエクアドル

元谷 スペインの植民地から独立した国だから、スペイン語なのですね。

バルベリス はい。一八二二年に今のベネズエラ、コロンビア、エクアドル、パナマをまとめたグラン・コロンビアとしてスペインから独立しました。エクアドルでの人間の活動は、紀元前一万年に遡ります。紀元前四千年頃から土器を作る文化が栄えました。キトでは紀元前千五百〜五百年の集落の跡が確認されています。その後十五世紀後半まで、シエラやコスタ等それぞれに、強力な首長を仰ぐ文化が存在していました。十五世紀後半にはインカ帝国により征服され、さらに十六世紀半ばにはスペインに占領され、その後約三百年にわたって植民地とされていました。エクアドルは一八二二年にスペインから独立、一八三〇年にグラン・コロンビアから分離しました。一九七九年に民政移管、二〇〇八年には現在の憲法が制定され今に至っています。

元谷 エクアドルではどのような産業が盛んなのでしょうか。

バルベリス アマゾン地域で行われている石油採掘が最大の産業で、輸出の約五割を占めます。その他はバナナやカカオ等を栽培する農業、エビ等の水産業です。日本へも原油やバナナ、冷凍ブロッコリー、カカオ、魚介類等を輸出しています。日本との外交関係は古く、昨年(二〇一八年)で百周年を迎えました。二〇一八年八月には河野前外務大臣がエクアドルを訪問、九月には逆にエクアドルからモレノ大統領とバレンシア外務大臣が訪日、日本とエクアドルの関係をより強固なものにするために、政府高官による協議が行われました。特に話し合われたのは経済関係で、二重課税を避ける協定が締結され、投資に関する条約も提案されました。日本からのさらなる投資誘致に期待しています。観光にも力を入れていますし、日本の市場にバナナやカカオ等、もっとエクアドルのものを輸出していきたいと考えています。

元谷 日本とエクアドルは百年もの外交の歴史があるのですね。知りませんでした。

バルベリス そうです、一九一八年の日・エクアドル修好通商航海条約締結を機に、エクアドルと日本の外交関係は百年前に公式に始まりました。その同じ年、野口英世がロックフェラー医学研究所から黄熱病の研究のためにエクアドルに派遣されました。今の日本の千円札には野口英世の肖像写真が印刷されていますが、この写真はエクアドルのグアヤキルで撮影されたものなのです。

元谷 それは知りませんでした。

バルベリス グアヤキルに到着後、すぐに研究を開始した野口は九日目に黄熱病の病原体を発見、ワクチンを精製して多くの人々の命を救いました。後に野口が発見した病原体は黄熱病のものではなく、よく似た症状を引き起こす感染症であるワイル病のものだったと判明しています。当時はワイル病と黄熱病の区別なく黄熱病と診断されており、野口がワイル病から人々を救ったのは事実なのです。この野口の研究でエクアドルの人々は日本に恩義を感じています。キトやグアヤキルには野口英世の胸像が設置され、グアヤキルにはヒデヨノグチ通りがあり、キトの郊外には野口英世小学校もあるのです。百年後の今でも、エクアドルと日本は野口英世によって結ばれています。

元谷 そこまで評価されているのですね。驚きました。

ガラパゴス諸島の
巡り方には二通りある

元谷 エクアドルは今、観光にも力を入れているということですが、私もガラパゴス諸島には是非行ってみたいと考えています。まずエクアドルまでは日本からはどうやって行けばいいでしょうか。

バルベリス アメリカ経由が楽だと思います。ヒューストンやアトランタから首都のキトへ直行便が飛んでいます。乗り継ぎも入れて、日本からキトまで約二十時間です。

元谷 アパホテルのあるニューヨークやカナダのバンクーバーからはキト便はないのでしょうか。

バルベリス ニューヨークからはありますが、バンクーバーからはありませんね。

元谷 キトからガラパゴスへは飛行機で行くのでしょうか。

バルベリス はい。キトとグアヤキルから、サンタクルス島のバルトラ空港か、サン・クリストバル島のサン・クリストバル空港へ飛行機が飛んでいます。ガラパゴス諸島の生態系を守るために、本土の空港で厳しい検疫が行われます。また入島税も必要になります。

元谷 諸島ですから島がいくつもあります。どの島に行くのが良いのでしょうか。

バルベリス ガラパゴス諸島を巡るにはクルーズ船で船内に寝泊まりして巡るか、サンタクルズ島等のホテルに滞在して、毎日ツアーでいろいろな島へ行くかのどちらかになります。また島を観光する際には必ず公認の免許を持ったナチュラリスト・ガイドと一緒に行動します。各島では観光客が訪れることができる場所や道が決まっていて、そこ以外は立ち入り禁止です。それでも多くの動物や鳥類を見ることができます。最も有名な動物はガラパゴス・ゾウガメでしょう。その他ガラパゴス・ウミイグアナやガラパゴスアシカ、鳥類ではアオアシカツオドリやグンカンドリ等がよく知られています。どんな形で巡っても、ガラパゴス諸島の滞在には必ず満足すると思います。

元谷 島々を全て巡るには、どれくらいの滞在が必要でしょうか。

バルベリス 一週間は掛かります。最近では作家の村上春樹さんもガラパゴス諸島を巡られましたよ。

元谷 それだけの時間をガラパゴス諸島だけで費やすのは難しそうです。できて二泊でしょうか(笑)。

キトやクエンカ等
古い街並が残る世界遺産

元谷 ガラパゴス諸島の他には、どこに行くのがおすすめでしょうか。

バルベリス まず首都のキトですね。この街の旧市街は十六世紀からのスペインの植民地時代の古い街並が残っているということから、世界文化遺産に登録されています。この旧市街にあるパネシージョの丘からはキト市街を一望することができます。十六世紀のキトは南アメリカでのキリスト教布教の拠点となっていたことから、教会や修道院等が多く作られており、「アメリカ大陸の修道院」と呼ばれていました。例えばサン・フランシスコ教会・修道院は重々しいファサードと金をふんだんに使った華やかな内部の装飾が見ものです。赤道直下のキトらしいスポットが、郊外にある赤道記念碑です。赤道を示す線が引かれており、これをまたいだポーズでの記念撮影が定番となっています。キト市街の手工芸品市場では、色とりどりの民族衣装やバッグ等、お土産を買うことができます。観光客に近年人気なのがエクアドル列車です。蒸気機関車が往年のスペイン風客車を牽く列車も走っており、三泊四日でキトとグアヤキルを結んでいます。高低差三千メートル以上のこの列車の旅では、山岳地帯の絶景を眺めることができます。また、キトから日帰りできる列車コースもあります。

元谷 ぜひキトにも一泊してみたいですね。

バルベリス エクアドルには八百キロメートルも海岸線がありますから、ガラパゴス諸島以外にもビーチリゾートがあり、マリンスポーツが楽しめたり、プラタ島という無人島でガラパゴス同様にアオアシカツオドリやグンカンドリを見たりすることができます。また山岳地帯のシエラにあるエクアドル第三の都市・クエンカにも植民地時代の街並が残っていて、ここも世界文化遺産として登録されています。またこの街はパナマソウの葉から作る上質な帽子の産地としても知られています。手編みで時間を掛けて丁寧に作られるこの帽子は、お土産としてとても人気があります。

元谷 近い内にエクアドルを訪問したいと思います。その際には現地で政府の方とお会いできるように、バルベリスさんに手配していただければ助かります。

バルベリス もちろん、喜んで手配します。

元谷 よろしくお願いいたします。最後にいつも「若い人に一言」をお聞きしています。

バルベリス 私から若い人へのメッセージは、「希望を失ってはいけない」になるでしょう。気候変動や貧困、テロ、汚職、麻薬といったような今日の世界的課題に対して持続可能で恒久的な解決方法を見つけ出せるよう、できる限り準備をしていて欲しいですね。

元谷 環境問題にはアパホテルも熱心に取り組んでいます。部屋を機能的にコンパクトに設計することで、二酸化炭素の排出を通常のシティホテルの三分の一に抑えています。お湯に空気を混ぜることでお湯の勢いを増して、お湯の量は少なくてシャワーの圧力は強くなる節水シャワーや、予め設定した湯量になると自動的に給湯が止まるサーモスタット付定量止水栓、更に通常の浴槽より約二十パーセント節水しながらもたっぷりの入浴感を実現した、自社開発の卵型浴槽等も設置しています。今年九月二十日には二千三百十一室と、国内最大級の部屋数を誇るアパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉が、十月十一日には六百十三室のアパホテル〈山手大塚駅タワー〉がオープンしました。ご招待しますので、是非一度アパホテルに宿泊してみてください。

バルベリス 是非お願いします。

元谷 本日は大変興味深いお話をありがとうございました。

バルベリス ありがとうございました。

対談日 2019年10月4日