BIGTALK

人口が減少しても
豊かな日本は実現できる

慶應義塾大学 経済学部教授 塩澤修平
×
APAグループ代表 元谷外志雄

「真の近現代史観」懸賞論文において佳作と優秀賞(社会人部門)の三回入賞、勝兵塾の講師 特待生として講演も行っている慶應義塾大学経済学部教授の塩澤修平氏。専門である理論経済学とは別に、日本の歴史認識問題について鋭い考察を投げかける氏に、歴史の捉え方から日本経済の今後までをお聞きしました。
塩澤 修平氏

1955年東京生まれ。1978年慶應義塾大学経済学部卒業。1980年慶應義塾大学大学院経済学研究科 修士課程修了。1986年ミネソタ大学Ph.D.取得の後、1987年より慶應義塾大学経済学部助教授を経て、1994年より同教授となり、その後1995~2001年同大学通信教育部長。2001~2003年に内閣府へ出向し国際経済担当参事官を務め、2005〜2009年には経済学部長も務める。

通説を理由に逃げるのは学問の進歩の妨げだ

元谷 本日はビッグトークへのご登場、ありがとうございます。塩澤さんは「真の近現代史観」懸賞論文において、第四回・第五回で佳作、第六回では優秀賞(社会人部門)を獲得していて、私と考え方に非常に近いものがあると感じています。ところで、塩澤さんは慶應大学通信教育部長をされていたのですね。実は私も慶應大学経済学部の通信教育部で学んでいたのですよ。(笑)卒業はしていませんがね。

塩澤 そうだったのですか。それでは、今日はよろしくお願いします。

元谷 塩澤さんにも何度かお話をしてもらっている勝兵塾ですが、この九月で第五十二回となりました。私はそこで、共和党の下院議員でルーズベルトの政敵だったハミルトン・フィッシュが著した「ルーズベルトの開戦責任」という本の話をしました。ルーズベルトは日本に突きつけた最後通牒であるハル・ノートの存在を、アメリカ国民のみならず上下両院にも秘密にしていたのです。ハミルトン・フィッシュはそれを知らずに真珠湾攻撃の直後、参戦反対から賛成に転じる演説を行いますが、戦後にハル・ノートの存在を知り、その演説を猛烈に後悔するのです。この本は一九七六年に出版されているのですが、戦後七十年の間に先の大戦に関して、次々と新しい真実が明らかになっています。本来はそういった新事実を取り入れて、論理的に近現代史を考察するべきなのに、日本のメディアも歴史学会も、東京裁判史観に囚われて、新しい事実を無視しています。だから私は「理論近現代史学」という本を書いたのです。

塩澤 「理論近現代史学」というのをお聞きして、非常に感銘を受けました。私の専門である理論経済学には学問としての相応の伝統と歴史がありますが、近現代史に理論と論理で切り込むのは、全く未知の世界だと思います。学問的にも非常に期待しています。

元谷 メディアや多くの学者は歴史の新事実に向き合わずに、「通説だから」と逃れる。そして新しい歴史を主張する人に「歴史修正主義者」のレッテル貼りを行います。

塩澤 そのレッテル貼りは、学問の進歩のプロセスを無視しています。通説を覆して広げていくのが学問の在り方なのですから。

元谷 全く同感です。ただ勝者が歴史を作り、それが一定期間「常識」となるのは、力の論理としてやむを得ないことです。しかし歴史が百年単位で変わるというならば、戦後七十年が経過し、そろそろ見直し期に入ってきたのではないでしょうか。

塩澤 その通りだと思います。

元谷 世論の空気も変わりました。転換点は、第一回「真の近現代史観」懸賞論文で最優秀賞を獲得した現職の航空幕僚長の田母神俊雄氏が、こともあろうか自民党政権によって更迭されたことです。この時が日本が左傾化した頂点かもしれません。全メディアが田母神批判を行い、大騒動になりましたが、逆にこれで多くの国民が覚醒して、日本の保守化が進みました。

塩澤 この騒動では田母神氏の論文の中身に対する議論がほとんどなく、「政府見解とずれている」とか「歴史を語る立場にない」とか、本質とはかけ離れた形式についての批判に終始しました。中身が間違っているという批判は自由なのですが、意見を表明してはいけないというのは、言論の自由に明らかに反することです。

元谷 同感です。私は田母神論文全文を産経新聞に広告として掲載したのですが、多くの人々から共感の電話やFAXが届きました。自衛隊を退職した田母神氏も、その後講演や作家活動で大人気となりました。結局世の中は正しい方向に進み、安倍首相の再登板に繋がったのだと思います。「真の近現代史観」懸賞論文も今年で第八回目となりました。正に継続は力ですね。今年から審査委員に東京大学名誉教授の小堀桂一郎氏と大月短期大学名誉教授、日本歴史学会会員である小山常実氏に新しく加わっていただき、現在審査の真っ最中です。

塩澤 しがらみなく定説を覆すことができるように、こうした懸賞論文を通じて、歴史の専門家ではない人もどんどん発信をしていくべきですね。

元谷 そうです。勝兵塾も「ここから首相を輩出する」と宣言して立ち上げてから、四年四カ月が経ちました。先日の読売新聞には、講師特待生の稲田朋美氏が「ポスト安倍」などと書かれています。稲田さんは私にも安倍首相にも考え方が合いますし、自民党政調会長としての答弁も明解です。まだ当選回数が少ないですが、安倍首相が最低でも三年、場合によってはさらに三年、続ける可能性がありますから、その頃には丁度適任となるのではないでしょうか。ポスト安倍は女性では稲田さんですが、男性となると見当たりませんね。

塩澤 先日、国債に関するお話で、稲田さんにお会いしました。私も代表と同じ印象です。

先の大戦に至る道筋には常にソ連の姿があった

元谷 そして日本より先に指導者の交代が行われるのがアメリカです。私はポストオバマとして、共和党のルビオ上院議員に期待しています。若いですが弁が立ち、尖閣諸島は日本の領土と明言、中国が尖閣諸島周辺に設定した防空識別圏に対し、非難決議案を提出して可決させています。両親がキューバからの移民者でカトリック信者と、WASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)ではないとか、まだ四十四歳で若いとの声もあります。しかしケネディとオバマはWASPではないのに大統領になっていますし、ケネディは就任時四十三歳でした。今共和党ではエキセントリックな発言でドナルド・トランプが支持を集めていますが、早晩失速します。ルビオにも十分共和党の大統領候補者になるチャンスがあると思います。

塩澤 歴史を振り返れば、日本にとっては共和党政権の時代の方が良いことが多かったといえます。

元谷 そうですね。先の日米大戦の開戦時も民主党政権ですし、原爆投下も民主党、ベトナム戦争を拡大したのも民主党です。原爆投下時の大統領はトルーマンですが、彼はルーズベルトが死んで副大統領から大統領になるまで、原爆開発計画を知らなかった。全てを仕切り、投下の決断を下させたのは国務長官のバーンズです。その理由はソ連の世界赤化の動きを牽制して、第三次世界大戦を防ぐことでした。どの国も自国の利益のためであれば、嘘もつくし、大量殺戮も厭わないのです。

塩澤 そもそも開戦も、アメリカがヨーロッパに参戦したいがために、石油禁輸などを含めて執拗に日本を挑発したからでしょう。

元谷 その通りです。そして背後にはソ連がいたのです。ルーズベルト政権には、二百人ものソ連工作員がいたことが、後に公表されたソ連と工作員との暗号通信を解読したヴェノナファイルから判明しています。ハル・ノートの原案を書いた財務次官補のハリー・デクスター・ホワイトも、ソ連の工作員でした。そもそも先の大戦の歴史は、一九二八年の張作霖爆殺事件に遡ります。この事件は、その二年前にソ連が起こした暗殺未遂事件があったこと、事件後に調査したイギリスの陸軍情報部がソ連の仕業と結論づけた報告書が二〇〇七年に公表されたことから、ソ連の特務機関・GRU(グルー)が関東軍の犯行に見せかけて行ったことはほぼ確実です。しかしメディアも学者も関東軍の河本大作大佐がやったという通説に固執して、見解を変えようとはしません。

塩澤 新しいものも含めて基本的な事実をまず共有して、その上で議論をする必要があると思います。

元谷 どんな国にも様々な歴史にまつわる問題があります。日本の場合も冷戦終結までは、アメリカの築いた歴史観を受け入れざるを得なかった。しかしそれから四半世紀も経過した今、やはりちゃんとした日本人の歴史を持たなければなりません。また冷戦終結によって、日本はアメリカにとって、経済的な仮想敵国に変わったことを認識しないと。

塩澤 確かにそうですね。

元谷 今フォルクスワーゲンの不正ソフト問題が大きな騒ぎになっています。ドイツがこんな不正を行うとは、想像できませんでした。今のEUの中心はドイツです。国家間の力の源泉は核兵器なのですが、冷戦後のヨーロッパをEUはフランスの核とドイツの経済力でまとめてきました。そこでのドイツの狙いは、ユーロ導入による通貨安です。これによって、輸出を大幅に伸ばし、ドイツは経済的繁栄を謳歌してきました。この間逆に日本はアメリカに円高政策を強いられ、経済が停滞、GDPで中国に抜かれることになりました。これを引っくり返してデフレ脱却を目指しているのが安倍首相です。

塩澤 私は安倍政権が凄いところは、経済政策と安保政策だけではなく、さらに国としての歴史観や思想的なことまでを正面から真剣に取り組んでいることだと思っています。

元谷 第一次安倍政権の時には、思いの丈を真正面から打ち出してアメリカの逆鱗に触れ、辞任に追い込まれました。今は一に経済、二に経済、三四がなくて、五に経済です。日本の防衛費はGDPの一%を想定していますから、経済が伸びればそれにふさわしい軍事力が身につきます。だからといって日本が軍事大国となって、他国を侵略することはあり得ません。そんな時代でもないし、国民も認めない。それを今実行しているのは、ロシアと中国です。

塩澤 その通りです。

「戦争法案」は本質と異なるレッテル貼り

元谷 ロシアは、ウクライナに介入してクリミア半島を併合しました。中国は一九六九年のダマンスキー島事件でロシアとの領土を確定。その他、モンゴル、チベット、東トルキスタン、インド、ベトナムとも侵攻や紛争などを通じて、陸の領土を確定させてきました。陸が終了したので、次は海洋覇権を握るという野心の下に、南シナ海や東シナ海に進出してきています。

塩澤 尖閣諸島に関しては、中国の野心に対して日本は当然ながら正当な領有権を主張しています。

元谷 しかし日本がいくら正しいことを主張しても、国際関係は結局は力の論理で決まってしまいます。私が最近提唱しているのは、アメリカのユダヤ資本のマーケティング会社を活用して、全世界に日本の主張をPRしてもらうことです。メディア、金融に世界的なネットワークを持つユダヤ人を活用して、尖閣諸島の領有権のみならず、南京事件や従軍慰安婦強制連行が捏造であることを明確に主張させるのです。そして例えば慰安婦像の銅像が立つのを一つ阻止すればいくらと、実績ごとに報酬を支払うのです。報酬を支払うことに抵抗がある人もいるでしょうが、原発停止のために毎日百億円が燃料費として消えているのです。多少の金額は惜しくない。新国立競技場が三千億円掛かることが批判されて白紙撤回となり、下村文部科学大臣が責任をとってその職から離れることになりましたが、そんな責任はありません。オリンピックの経済効果を考えれば、三千億円ぐらいは安いものです。しかしメディアが高いと煽ったことで、こんな結果になってしまいました。正に日本人の敵は日本人です。

塩澤 どんな国も自国の国益が一番で、他国を貶めるのですが、日本の場合は日本人が自ら貶めるのが情けないことです。すぐに反論をしていく必要があります。昨年吉田証言を信じて書いた従軍慰安婦の記事を掲載したことを読者に謝罪した朝日新聞ですが、読者だけではなく日本国民全員に謝罪すべきでした。

元谷 さらに朝日新聞は、英語で全世界に誤報でしたと伝達すべきです。安保法案に関しても、メディアは反対派のデモや主張ばかりを報道していて、非常にアンバランスでした。

塩澤 反対派による戦争法案という本質とは異なるレッテル貼りを、そのまま報道していました。あの法案は戦争防止法案です。反対する人には、抑止力とか力のバランスという発想がありません。

元谷 現実的な脅威を感じることができる感覚が、洗脳で麻痺しているのでしょう。今の日本国憲法を素直に読んで、素晴らしい憲法と思う感性が私は不思議です。そもそもこの憲法は、占領国が被占領国の恒久法を定めてはならないというハーグ陸戦法規に違反して定められた、違法な憲法です。

塩澤 そうです。そして制定時に日本には主権がなかった。そこをきちんと認識した上で議論しないと。

元谷 本来であれば、サンフランシスコ講和条約発効時に、憲法を改正すべきだったのです。

塩澤 その通りだと思います。

元谷 過去の繰り言を言っていてもしょうがないので、これからどうするかです。日本語を理解する人が世界には少ないので、日本の主張をもっと英語やスペイン語、フランス語、中国語など解する人が多い言語で発信することです。また日本人には舶来志向というか、外国人の言うことの方が素直に聞きやすいという傾向がありますから、アメリカのマーケティング会社を使うことは国内的にもメリットがあります。

塩澤 なるほど、そうですね。

元谷 そして情報省を三千億円の予算と三千人の要員で創設、世界各国のメディアをチェックして、間違った報道があれば二十四時間以内にその国の言葉で反論するのです。黙っていると認めたことになります。日本人は真実ならいつかはわかってくれると鷹揚な態度を取りがちですが、それでは国際的には通用しません。最初が肝心で、尖閣諸島の公船の領海侵犯も、最初の一隻を撃沈していれば二隻目は来なかったのです。また日本人は誰もが約束を守ると考えていますが、そうではない。守らない相手には守るまで待つのではなく、即座に約束を破棄して反撃に転じないと。

塩澤 情報省のアイデアは素晴らしいですね。日本人同士であれば、お互い譲歩して…という考えが出てくるのですが、国際社会では違います。不必要に譲歩すれば、善意とは受け取られずに付け込まれるだけです。

元谷 情報省について私が主張するようになってから、政府の海外への広報予算が毎年増えてきています。しかし外務省ではなく別組織でやらないと。偏差値エリートの外務省のキャリア官僚は、丸暗記は得意ですが国益概念がありません。

塩澤 そうかもしれません。

今の若者は素直で優秀育てればどんどん伸びる

元谷 中国が建国から考えているのは、百年計画です。百年でアメリカを圧倒して世界一の大国になる。今中国は建国六十六年ですから、あと三十四年で目標を達成しようとするでしょう。

塩澤 それに対抗して、日本はもっと経済を強くしていかなければなりません。まだまだ日本は高い潜在能力をもっていますので、これを顕在化させられる方法を考える必要があります。

元谷 これまで日本は先端科学技術を安売りしてきました。そしてこれらを組み込んだ兵器を高値で買う羽目になっています。小惑星にまで探査機を飛ばして、岩石を採集する技術力があるのですから、国産兵器をもっと増やさないと。物理学や化学、医学生理学など、中国・韓国が獲得していない科学系のノーベル賞を、日本はいくつも受賞しています。これに誇りを持つべきです。

塩澤 そうです。

元谷 私が常々言っているのは、日本は先端技術大国、先端医療大国、そして観光大国になるべきだと。清潔で治安がよく、食事が美味しく公共交通機関が時間に正確で、四季折々の自然や都市のエンタテインメントなど観光資源にも恵まれている日本に、観光客が来ない方がおかしい。外国人訪日客は今年は二千万人に届きそうな勢いですが、これが三千万人や五千万人になるのも真っ当なことです。そして多くの中国人が日本の素晴らしさを知って、反日から覚醒していくという効果も期待できます。一次産業から加工貿易の二次産業へと移行することで経済を発展させてきた日本ですが、これからは日本人自身も楽しみながら外国人観光客も集め、三次産業を発展させていくべきです。中国やインドなど、日本の周辺には訪日客の巨大なマーケットがあるのです。発展途上国の所得水準が上昇、原油価格が低下し格安航空会社が増え航空運賃が安くなり、ローカルからローカルへの航空路線も増加することで海外旅行が大幅に増え、世界はこれから大観光時代を迎えます。ここに日本の観光大国化へのチャンスがあります。例えばインドなどへのビザの発給要件を緩和するなどで、どんどん来日しやすくするべきでしょう。

塩澤 遊び心で人生を楽しむことが経済を活性化させるという発想は、私も大賛成です。

元谷 日本の人口が減少することが経済に影響すると言われています。しかしこれも外国人観光客を増やし、滞留人口を増やすことで補えるのではないでしょうか。簡単に移民という解決策に飛びつくのはどうかなと考えています。

塩澤 確かに移民に関しては慎重に考えるべきです。人口減少による需要の減少については、代表の仰る通りです。供給力の減少に対しては、ロボットなど技術によって生産性を高めることで対応することが可能です。私も人口減少によって日本経済が衰退することはないと考えています。

元谷 人口が少なくても豊かな日本を作っていきたいですね。最後にいつも「若い人に一言」をお聞きしているのですが。

塩澤 大学教員という仕事柄、常に若い人々に接しているのですが、今の若者の多くは素直で優秀です。大人が上手く育ててあげれば、どんどん伸びていきます。自分の持つ潜在的な力に自信を持って、将来大いに活躍をして欲しいです。

元谷 まず議論ができる人材に育って欲しいですね。過去は暗記できますが未来は暗記できませんから、先を見通す洞察力や知恵を議論を通して獲得していくべきでしょう。

塩澤 そうです。基本的な知識を得ることも大事なのですが、その知識を基にどう考えるかですね。

元谷 私は小学生の頃から新聞を読むのが趣味で、分からない言葉があれば、「現代用語の基礎知識」で調べていました。これで知識が身につきました。

塩澤 あと、友人を大事にして欲しいですね。学生時代に培った人間関係は、社会に出てから大いに効いてきます。そして人に対する評価の基準を複数持つことが重要です。ひとつの基準、たとえば偏差値だけで人を判断しないこと。そして年齢に関係なく、一生勉強することです。

元谷 生涯教育は少子化が進む中で、さらに重要になっていくでしょうね。仕事と学問を行ったり来たりする人も増えると思います。今日は本当にありがとうございました。